「そんなことって、どんなこと」


私はむくれ顔をして、のっそりと身体を起こした。


「あんな偉そうで傲慢な死神と結婚なんて、地獄以外のなんでもない!」

「神様の中ではだいぶマシな方よ、白夜は」

「神様って、どれだけ性格悪い集団なのよ」


生物学的に同じ『女』の小町とは、罰当たりなことでも、ざっくばらんに話ができる。


「……それに白夜って、私をお嫁さんにしたくて、迎えに来る約束をしたんじゃないじゃない」


私はブツブツと愚痴を添えて、口を噤んだ。
「にゃおん」と鳴いて、足に擦り寄る彼女を抱き上げ、ギュッと胸に抱きしめる。


「魂ごと消滅なんて怖いけどさ。だからって、お互い好きでもないのに……苦しいよ」


小町はゴロゴロと喉を鳴らし、私の胸元から顔を上げた。


「白夜は、女心に疎いからねえ……」

「綺麗な顔してるし、黙ってればモテそうなのに」

「私が白夜の眷属になった頃は、そっちも華やかだったけど、ここ何百年かは摘まみ食い程度。面倒臭いみたい」

「何百年って」


私は、ひくっと頬を引き攣らせた。
幽世で何百年ということは、こっちでは千年近いかそれ以上。
頭の中で、源平が合戦を始める。
なんとも壮大だ。