あれから二日。
父と母は、私を腫れ物のように扱う。
死神の話にも触れようとしない。
だから私も口にせず、いつも通りに振る舞い、過ごしていた。
本当は、ずっと自分の『死』について考えていて、白夜のことが頭から離れないのに。


『お前の十八の誕生日……『人間』としての余命が続く間に、自分で決めろ』


恐らくそれが、私の『命』のリミットなのだろう。
誕生日まで、あと四日。
消滅するか、白夜の嫁になるか。
考え、悩める時間は短い。
だけど……。


「どっちにしても、私を待っているのは地獄か……」


今日も午後三時までアルバイトをして帰宅した私は、自室でベッドに転がり、ぼんやりと独り言ちた。
すると、部屋の隅から、チリンと微かな鈴の音が響いた。


「そんなことないわよ」


部屋の北側の角に目線を流すと、そこから黒い子猫が姿を現した。
「にゃあん」と一鳴きして、軽やかにベッドに飛び乗ってくる。


――もはや、驚きはしない。
鈴がついた赤い首輪を着けているこの黒猫も、白夜の眷属だ。
私が白夜に幽世に連れて行かれた日の夜、初めて私の部屋にやってきて、それ以来ちょくちょく現れる。


メスで、名は小町(こまち)
五右衛門より序列が上だそうで、黒猫の姿のまま人間の言葉を話す。