彼の向かいのソファに戻り、悔し紛れに乱暴に腰を下ろした。
私が座るまで、見張るように目で追っていた白夜が、


「お前の父親が話したことは、概ね真実だ。正すべきことと足りないことだけ、説明する」


ソファに深く身を沈め、優然と足を組み替える。
父が私になにを話したかも、すべてお見通しなんだろう。
やはり抗議したくなるけど、話の腰を折っている場合じゃないのは理解している。
私は、喉の奥まで出かかった声をのみ込み、彼に視線を返した。


「俺はお前の命を救ったわけではない。神力で魂を繋ぎ止めただけだ」


素っ気なく淡々とした口調で言われ、膝の上に置いた手を重ね合わせ、ギュッと握りしめる。


「……だから私は、白夜の神力が尽きたら、死ぬんでしょう?」


自分の死を確認することに、いやがおうでも顔が強張る。
あえて一単語ずつ区切るようにして、声の震えを悟られないようにした。
私の虚勢を知ってか知らずか、白夜は美しい口元を皮肉に歪める。


「正確に言い換えれば、死ぬではなく消滅だ」

「え……」

「何故なら、お前は十八年前、すでに死んでいる。死神の俺でも、今、お前の命を狩ることはできない」


――意味がわからない。
私は戸惑いを隠せず、彼の赤い瞳にジッと目を凝らした。