「っ！！」


息をのんで頭を抱える私とは正反対に、白夜は平然として、顔の前に腕を翳した。
カラスが、そこに降り立つ。


「ただいま、五右衛門(ごえもん)」

「カーッ、カカッ」

「初対面だろ。そうバカにするな。ちょうどいい、お前から説明してやってくれ」

「……？」


私を無視して、カラスと会話？する彼に、私は腰を引かせた。
だけど、彼はやはり構うことなく。


「ああ……その姿じゃ、なにを言っても水葵には通じないか」


カラスが止まった腕を、風を切るように振り払った。
すると――。


「白夜様。こんなアホで無知な人間を娶るなんて、本気なのか」

「！？」


カラスが忽然と姿を消し、その代わり、白夜と同じ黒ずくめの格好をした、小学生くらいの男の子が現れた。
私は目を剥き、あたふたと辺りを見回し、


「それは今のカラスだ。俺の眷属で、名は五右衛門」


またしても、白夜に思考を先回りされた。
眷属とは、動物の姿を借りた、神の使いのことだ。
でも、目の前でカラスが男の子になるなんて、信じられない……。
呆然とする私に、五右衛門と紹介された男の子――違うカラス、いや、男の子でいい？――が、やけに尊大に腕組みをした。


「お前、臍で茶が沸かせるようなバカな質問、白夜様にするな。白夜様は神だぞ。お前の頭の中なんて、お見通しに決まってるだろ」