再び視界が捉えたのは、見たことのない洋風の部屋だった。
時代がかった、幾つもの立派な調度品……アンティークだろうか。
ヨーロッパの貴族邸といった雰囲気で、とても素敵だ。
素敵だけど……。


私は、落ち着きなく辺りを見回した。
ほんの一瞬前まで、自分の部屋にいたはずなのに。
ここは一体――。


「ここは俺の住処だ。幽夜の神は、定住せず常に浮遊してるとでも思ってたか?」


死神……白夜はそう言って、さっさとソファに腰を下ろす。
黒い装束の裾を捌いて長い足を組み上げ、


「水葵、座れ」


横柄に私を一瞥した。


「っ……白夜っ」


私は命令を聞かずに、彼の前に回り込んだ。
白夜はソファに背を預け、顎を上げて私を仰ぐ。


「さっきも……あなた、私が考えてること、読んでる?」


無意識に胸元の服を手繰り寄せ、ギュッと握りしめる私に、ほんのわずかに虚を衝かれたような表情をして……。


「……ふっ」


赤い目を細めて、短い吐息を漏らした。
薄く口角が上がったのを見れば、小馬鹿にされたと察せる。


「っ、びゃく……」

「カー、カーッ」


ムキになって詰め寄ろうとして、鋭く甲高い鳴き声に阻まれた。
私が条件反射でビクッとするのと同時に、どこからかバサバサと音がして、大きなカラスが飛び込んできた。