この黒ずくめで、名には『白』という字が使われているなんて。
しかも、太陽が沈まず、闇が来ない夜を表す言葉だ。
ちょっとアンマッチ……と思ったのが伝わってしまったのか。


「俺がつけた名前じゃない。そもそも、死神は夜に活動する悪霊とは違う。愚浅な下級霊と一緒にするな」

「す、すみません」


忌々しく顔を歪めるのを見て、私は条件反射で背筋を伸ばした。
ふん、と鼻を鳴らす彼に怯んだものの、


「あの……白夜、様」


思い切って呼びかける。


「嫁だろ。敬称略でいい」

「い、いえ。私はあなたの嫁では」

「そういう約束だ」

「嫁とか置いといて……あなたは私より何歳も年上で」


思いついたとばかりに反論する私を、彼は鼻で笑った。


「目上の者を敬いたいなら理解できるが、俺に年齢という概念はない。創造された時からこの姿、この知能だ。そもそも、何年生きたかなど、果てしなくて覚えていない」

「っ……」

「見てくれはお前と大して変わらない。これだけ言ってもまだ歯向かうなら、神勅とでも思え」

「…………」


なんて傲慢な神様だ。
私は、自分が置かれた状況も忘れて、呆気に取られてしまった。