夢と現、常識と非常識、理性と感性、相反するあらゆるものの狭間で、心が揺れ動く。


「…………」


私は左目に手を当て、痛みを堪えながら、モゾッと身体を起こした。
ベッドの上に座り込み、窓を見遣る。


射し込む光はオレンジ。
太陽が西に傾き始め、やがて東から訪れる闇で、空は群青に染まる。
昼から夜へと移り変わる時間、逢魔が時が近い――。


「っ」


思考に煽られ、私は弾かれたようにベッドから降りた。
勢いよく窓辺に走り、ガラッと音を立てて大きく窓を開ける。


逢魔が時。
黄昏時とも言い、妖怪や悪霊、魑魅魍魎が跋扈する禍々しい時間を指す。
幼い頃、両親から口を酸っぱくして言われた。


『日が暮れたら、裏の山に入ってはいけないよ。神隠しに遭ってしまうからね』


――それなら、今から裏山に入れば、昨夜の死神に会えるかもしれない。
私は肩で息をして、無意識に胸元の服を握りしめた。


会ってどうしたいかも、どうなるかもわからない。
でも、今の私は、自分の心も存在すらも、わからないことだらけだ。
『私』について一番詳しく知っているのは、私自身でも父でもない。
――私を生かしている死神だ。