私が神社の正職員になるのは、四月一日。
三月いっぱいはアルバイトの身分で、今日は午後三時に仕事を終えて帰宅した。


その頃には、母も落ち着きを取り戻していた。
いつも通り明るく振る舞おうとしているけど、ずっと伏し目がちで、私と目が合うのを避けている。


もちろん母も、私が死神に命を救われて生きていることは知ってるだろう。
それを私が父からどう聞かされたか知りたそうで……触れずにいたいようでもあって、ぎくしゃくしていてぎこちない。


私は母の探るような視線から逃げて、お茶を断り自室に下がった。
一人になると、無自覚に「ふう」と息が漏れる。


朝からずっと、神経が麻痺したみたいに頭がぼんやりしていた。
父の話を理解し、納得はしていても、ありのままに受容できるかどうかはまた別だ。


『お前は、十八で死ぬのではない。死神に嫁げば、これまでと変わらず生き続けられるはずだ』

『現世と幽世。世界を違えても、私はお前に生きていてほしい。生きてさえいてくれれば、私たちはこれからも共に暮らしていける』――。


それは、人間と神様が共生すると言われるこの街で生まれ育ったからこそ、口にできる言葉だ。