説明してくれる父の顔は、段々青白くなっていく。
一度言葉を切ってから、まっすぐ私を見つめ……。


「だから、命乞いをした。娘を連れていかないでくれ、と」

「…………」

「死神は、私の願いを聞いてくれた。十八年、時間をやると言って」

「十八年……」

無意識に反芻した私に、「そう」と相槌を打つ。
私はこくりと喉を鳴らし、膝の上に置いた手をギュッと握りしめた。
父の言い方でわかる。


「……私は、十八歳で死ぬのね」


ぼんやりと呟いた声は、喉に引っかかって掠れた。
死神は私の命を救ったのではなく、神力で生かしてくれたのだろう。


「私の余命……あとどのくらいだろう」


それも、昨夜の死神の言葉でわかる。
――死神の神力は、尽きかけている。


拝殿の方からザッザッという音が聞こえてきて、私は父から目を背けた。
砂を踏む音。
何人かの話し声に、時々明るい笑いが交じる。
職員たちが、境内の掃除を始めたようだ。
間もなく、参拝客も訪れるだろう。
いつもと変わらない朝が、動き出す。


なのに、私たちの間には、重い沈黙が漂ったまま。
父も私も、仕事に出なければいけないのに、会話を切り上げることができずにいる。