「え、、、」
そこはピンクや紫、水色など可愛い色の可愛いハートの世界だった。
まさに女の子が夢に見たような世界だった。
私と同じくらいの年齢の子もいた。
みんな不思議そうに周りを見渡している。

どこを見ても『可愛い』
たくさんの『ハート』
ほんのり香る『甘い匂い』
ふわふわした『ピンクの雲』
そして、、、『天使』

私は死んだのか。
死んだらこんなとこに来るのか。
天国か地獄に行くと聞いた事があったけど地獄では無さそうだ。
でも天国だとしたら人が沢山いるし全体的に白っぽいと小さい頃読んだ本に書いてあったきがする。
そんなことをずっと考えていると後ろから話しかけられた。
「ねぇ君、まだ説明聞いてない?」

話しかけてきたのは天使だ。小さい時本で見たことあるような男の子の天使。
頭に輪っかが乗ってて羽が生えている。
説明??なんのことか分からないけどこの場所の事についてなのだろう。
「はい。まだ何も」
「そうか、じゃあ説明するね。あっ、その前に色々聞かせて」
「えっと、、、?」
困っていると天使に色々なことを聞かれた。
「まず名前は?」
「中井心乃です」
「ここのちゃんって漢字でどう書くの?」
天使が不思議そうに訪ねてきたので持っていたメモ帳に書いて天使に見せた。
すると「可愛い名前」と笑顔で天使が言った。
「じゃあ年齢は?」
「17歳で高校2年生です」
「高校生かぁ。青春思い出すなあ。」
この時ふと思った。
知らない男の天使にこんなに個人情報を教えていいのだろうか。
周りの女の子たちはどうしているんだろうと気になって見てみると私と同じように質問されてる人もいたし楽しそうに話してる人もいた。
みんな質問に答えていたし、天使も悪いことなんてしそうにないので言える範囲のことは答えることにした。
「えっと、ちょっと待ってね」
天使が白いスマホのようなタブレットのようなものを手に持ってなにかしている。
ほかの天使も手に同じものを持っていた。
「あっ、あったあった」
天使が私に画面を見せてきた。その画面には私のプロフィールと写真があった。
なんでこんなのが乗っているんだろう。
「心乃ちゃんこれだよね」
「はい。なんで私のプロフィール、、、」
「天使だけが使えるサイトなんだ。
あ、知らない天使に色々聞かれて怖かったよね。ごめん。もう分かるだろうけど僕、天使。君のこと担当するからよろしく」
「お願いします」
「まず、ここは選ばれた女の子たちが来る場所で君は選ばれたんだよ」
私が選ばれた。。。選ばれることしたような覚えないけど。まぁ深く考えずに天使の話を聞くことにした。
「それでね、心乃ちゃん好きな人いるでしょ?」
私の好きな人、、、匠くんだ。
「はい。」
「その子と1年以内に付き合いなさい」
「え??」
「一応言うと選ばれた女の子たちは1年後に死んじゃうんだ。」
その言葉を聞いた瞬間、絶望というか悲しいというかどんな感情なのか分からなくなった。
「私、死ぬの、、、?」
「うん。心乃ちゃんは病気持ちだよね。それが悪化して。」
「死にたく、ない」
「だから絶対好きな子と幸せな日々を過ごして欲しい。」
頭の整理が追いつかなかった。
「匠くんと付き合いたい、、、」
「へぇー、たくみくん?のこと好きなんだ」
「はい。同じクラスの」
「じゃあ絶対匠くんと付き合って」
絶対付き合って、なんて無理な話だ。
「無理無理。匠くんは高嶺の花です」
「死んだ後に後悔するから付き合いな」
天使は私の話をスルーした。

「絶対無理なんですよ。私は3軍で匠くんは1軍なんです」
「あれか。スクールカーストってやつか。」
「はい」
「今6月だけどカーストは最近決まった感じ?」
クラス替えがあってみんな友達を作り始めた。そして最近スクールカーストが決まったのだ。
「はい。5月くらいにだいたい」
「じゃあ4月に戻してあげる」
私は声もあげられないほど驚いた。
天使は時を戻すことが出来るのか。4月に戻すなんてほんとにできるのだろうか。
「別に3軍でも匠くんに近ずけると思うけど心乃ちゃんが近ずきにくいなら」
「ほんとにできるんですか!?お願いします」
「じゃあ4月1日に戻すね。いつでも天使って呼んでくれれば心乃ちゃんのとこ行くし、心乃ちゃんを連れてここに来ることもできるから。あと、忘れないでね。タイムリミットはあと1年だよ」

それだけ言われて天使はいなくなって視界がぼやけてきた。1度目を閉じて開けるとベットの上に寝ていた。
きっと夢だろう。あんな世界があるわけない。病気が悪化して死ぬわけない。
ためしに1度「天使」と呼んでみた。
「どーした?心乃ちゃん?」
ああ。夢じゃなかったんだ。
「あ、なんでもないです。ごめんなさい。ほんとに呼べるのか試してみたくて」
「あーそういう事ね。今日の日付見てみな」
そう言って天使は消えた。
日付を見てみると4月1日だった。
一軍になるんじゃなくて匠くんに少し意識してもらおう。少し近ずきたい。


学校について教室に入るとみんな友達を作ったり仲のいい子と話したりしていた。その中に匠くんがいた。誰かに話しかけようとしていた。
チャンスだ。匠くんは今1人で困っている。
話しかけないと。
「はじめまして、」
緊張しながらも頑張って話しかけた。
「はじめまして。よろしくね、俺、匠」
「あ。私、心乃だよ。よろしくね」
やった。話せた。匠くんはスポーツが得意だし頭もいいし面白いし優しいし、あと1ヶ月くらいしたら女子はみんなメロメロになる。
「じゃあみんな座ってー」
担任の声が聞こえてきた。
みんなが席に着くと担任は1度聞いたことがある話を始めた。
みんなは真面目に聞いているけど私は1度聞いたことがあってひまだったので匠くんを見てることにした。
真剣に話を聞いてる匠くん。ほんとにかっこいい。

家に帰ってから天使をよんだ。
「はーい今日はどうでした??」
天使がにやにやしながらこちらを見てきた。
「自分から話しかけれた!」
「すごいじゃん!」
天使がすごく驚いていた。
「明日も頑張って!」
「うん!あっ、あそこ行きたい」
「あそこ??」
「あのさ昨日行ったところ」
「あー!天使の国ね」
「うん!天使の国って言うんだー」
「そうだよ!行こ行こ」
そう言って天使が私の手を掴んだ。
天使の羽が動き始めて私と天使は宙に浮いた。
天使がこっちを向いて微笑んだ。その瞬間周りのものがなくなって白くなった。
1度瞬きをすると天使の国に来ていた。
昨日居た女の子たちもいたし、初めて来たような女の子たちもいた。
「よーし、着いたよ」
「すごい・・・」
こんなの漫画やアニメでしか見たこと無かった。
天使が飛んで私も飛んで気づいたら違うところにいるなんてありえないと思っていた。
でも自分で実際に見てみると本当だとわかる。現実で起きてることなんだと。
「心乃ちゃんこっちこっち」
天使が手招きをしている。あわてて天使のところに行くと大きい画面があった。
そこには・・
「匠くん?なんで写ってるの?」
「うん。匠くんだよ、最愛の」
天使がにやにやしている
「最愛って」
「だってそうでしょ?」
「うん」
認めてしまった。だって大好きだから。
ふと画面を見ると匠くんが料理をしていた。
また好きになる理由が増えた。
料理もできるって完璧すぎる。
「かっこいいね。料理もできるんだ。」
天使が感心したように言うので私は
「でしょ?私の大好きな人」
天使がふっと噴き出した。
「そうだね」
「なんかさ・・・」
言葉が出てこなかった。何故か口が止まってしまった。
「なんか??」
しばらく考えてから
「なんか天使の国来ると落ち着くんだ」
と言うことが出来た。天使の国に来ると妙に落ち着くのだ。
この綺麗な色なのか匂いなのか分からないけど心から落ち着く。
「落ち着くの?多分この天使の声じゃない??」
天使が冗談めかしてそういった。
でも天使の声が落ち着く気もした。そんなこと素直に言えるはずもなく「違うよ!色とかだよー」とこたえた。
天使はふーん、と笑っていた。
「あ、今日病院行くんだった」
急に思い出した。出来ればずっとここに居たいけど病院は絶対行かないといけない。
「えっ、そっかじゃあ帰ろ」
そう言って天使が私の手を掴んだ。
すると視界がだんだんぼやけてきて白くなって気づくと部屋に来ていた。
昨日のことを思い出した。昨日もだんだん視界がぼやけてきて気づいたら部屋にいた。
そんなことを考えていたら病院に行く時間になっていた。
急いで病院に向かった。
何とか間に合った。
名前を呼ばれて診察室に入った。
これは何度経験しても緊張している。
「こんにちは」
「こんにちは、変わったところはない?」
「はい。特に」
今日はどんなことをされるのか、悪化していないか気になって仕方なかったけど冷静を装う。
「じゃあ血液検査からだから腕ここに乗せておいて」
うっ。と心の中で声が漏れる。血液検査も小さい時からずっと経験してきた。なのにいつになっても慣れない。
全部の検査が終わって「前回と何も変わりありませんでした。また1週間後に来てください」
と医者から伝えられた。
よかった。と声がもれそうになった。
天使から病気が悪化して死ぬと言われてからいつ病気が悪化するのか不安で仕方ない。

家に帰ってごはんを食べてお風呂に入ってから寝ようとしたのに寝れなかった。
病気のことが怖くて、匠くんの事考えてしまうからいつまでたっても寝れなかった。

気がついたら朝だった。
自分が寝たのか寝てないのか分からないまま学校に行った。
「心乃ちゃん?だよね、俺匠なんだけどさ昨日ありがと。話しかけてくれて嬉しかった」
匠くんから話しかけられた。
ドキドキしすぎて心臓が止まりそうになった。
「あっ、匠くん」
「てかさ、心乃って呼んでいい?」
「うん!全然呼び捨てで大丈夫」
「じゃあ心乃!これからもよろしくな」
「うん」
呼び捨て。心臓の音がうるさい。
匠くんが笑顔で自分の名前を呼んでくれた。
私も『匠』って呼べたらいいのに。口が動かない。