「好き」それはどういうことなのか。

 哲学的に考えるのならば、気に入って心がそれに向かうこと。

 科学的に考えるのならば、アドレナリンが分泌され、心拍数の上昇、手に汗をかくなどの症状が起きる。即ち、緊張感とストレスレベルが上昇し、ドーパミンやエンドルフィンの分泌も活性化する。その他、セロトニンやテストステロン、エストロゲンの分泌も作用している。

 心理学的に考えるのならば、生理的興奮、相手を助ける、自分とよく似ている、自信の低下、相手が好意を持ってくれる、褒めてくれる、よく会う、自分の秘密を打ち明けられる。

 直感だけならば、相手と話すときにドキドキする、相手が他の異性と楽しそうにしていると不安を感じる、できれば相手に笑っていてほしい、褒めてほしい、性的な感情を抱く等が挙げられる。
 考え方によっては、捕らえ方も変わって来る。

 人を好きになるとは難しい。
 私たちはそう思った。



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 今日は久しぶりに高校の時の、部活のメンバー数人で会うことになっていた。
 花(か)恋(れん)は前日から瑠那(るな)の家に泊まっていた。泊まっていたと言っても、結局は朝に帰って来たのだけど。2人はよく一緒にいる。前日の夜遅くなってから、お気に入りのバーに2人で向かった。夜の柔らかな風が心地よかった。
 電車に乗り、行きつけのバーまで向かう。
ここのバーの雰囲気が、瑠那も花恋も気に入っていた。

翌朝、瑠那の家に着くなり、シャワーだけ浴びて、布団に入った。

 カーテンの隙間から昼の鋭い太陽の光が差し込んでくる。瑠那は眩しくて思わず目を細める。
 久しぶりに部活のメンバーと会うので、気分が少し高揚していた。それは隣にいる花恋も一緒だったらしい。
 瑠那は先に起きて軽く身支度を整え、本を読んだりして、花恋が起きるまでゆっくりと過ごしていた。
 花恋は、時計が14時になろうとする頃、ようやく目を覚ました。
「あ、え? おはようございます」
「おはよう」
 花恋はどこで寝ているのか、時々忘れる癖があった。1学年下の花恋は未だに敬語癖が抜けない。丁寧で良いとは思うのだけど。
「まだ14時だから大丈夫だよ」
「あ、そうですか。なら良かった。準備してきます」そう告げると、洗面所に向かった。