病気が発覚してからしばらく、理夏は今まで通り僕と一緒の家に住み続けていた。

 向かい合って食事をする距離でも大丈夫だったが、隣り合って皿を洗おうとするとブレスレットが激しく震えた。
 距離を取ろうとする僕に対し、理夏は「やだっ! こっち来て!」と無理矢理腕を引っ張ろうとする。
 僕だってもちろんそばに居たかったが、理夏が死ぬのはもっとイヤだったので、そっと距離を取る。

「やだよ! 順平ともっと近くに居たいし、キスしたいし抱きしめたい!!」

 あんなにずっと笑いっぱなしだった理夏が、泣きながら何度も何度も叫び続ける。
 僕だって全く同じ気持ちなのに、そうしてやれないジレンマで心が押しつぶされそうになった。