「『近くに居るだけで』ってどれぐらいの距離なんですか!?」

 日本でも数人しか居ないという、離恋病の研究をしている医者の1人と話をしたとき、思わず興奮して詰め寄ってしまった。

「それは彼女の体調や病気の進行状況によって変わります、としか言えず、本当に申し訳ありません」

 先生は優しく答えてくれた。

「気休めにしかならないかも知れませんが、これを使ってみてはどうでしょうか」

 そう言って、先生は一対のブレスレットを手に取ってみせた。

 銀色に光る、2つの輪。
 1つが送信機で1つが受信機。

 離恋病の発症者が送信機を身に付け、アレルギーの対象となる人間が受信機を身に付ける。
 すると、送信機側のブレスレットが発症者の症状をリアルタイムでチェックし、悪化の兆候が出始めると受信機側に警告動作(バイブレーション)を促す。

 つまり、僕が少しずつ理夏に近づいていき、ブレスレットが震えた場所。
 そこが僕たちの境界線……ってわけだ。