僕はその時──というか今もだが──、新種の花を開発する仕事に携わっていた。
 なぜこうなったのか自分でも不思議なぐらいなのだが、何故か僕にはこの仕事の才能があったらしい。
 そして、理夏の話を聞いて驚いた。

「私は、お花屋さんやってるよ! 子供の頃からずっと夢だったんだ。凄いでしょ!」

 そうやって無邪気に笑える彼女がとても羨ましかった。
 と同時に、生まれて始めて“運命”というあやふやな存在を明確に感じた。

 花を創る僕と、花を売る理夏。

 彼女に関しては小さい頃からの夢だったみたいだが、僕はそんなの全然知らなかった。 そもそも、花の名前もろくに知らなかったほどで、気付いたらこの職に就いていた、って感じなのに。
 でも、目指していたものじゃないからこそ、余計に何か非現実的な何かの気配を感じずにはいられなかった。

 なによりも、時間を忘れるぐらいとにかく喋りまくって分かった確かなこと。
 それは……シンプルに、僕と理夏はもの凄く気が合う、ってこと。