「ねえ、順平」

「ん?」

「愛してるよ」

「ああ、僕も愛してる」

「だけどね」

「うん」

「ひとつ約束して」

「約束……?」

「そう。私が死んじゃった後、『理夏以外の人なんて愛せるわけない! 一生独身を貫く!』なんて絶対に言わないでよね!」

「……えっ!?」

「あっ、ほらやっぱり! そう思ってたんでしょ!!」

「いや……その……」

「ダメだから! そんなの絶対ダメだから! 私は順平と出会えて最高の人生だったし、こうやって最後までそばに居ることができたまま天国に行けて幸せなの! でも、順平がそんなバカなことしたら、その幸せどっかに消えちゃうよ! 私の存在が順平を縛り付けるなんて絶対にイヤ。だからこそ、こうやって……」

 理夏の顔から笑顔が消えた。
 あまりにも沢山の感情が湧きすぎて、頭がおかしくなりそうだった。
 ただ、ひしめき合う感情の中からひとつ、ひときわ大きな想いがプカッと浮かび上がってきた。
 それは……。

「分かった。約束する。そんな風にならないって」

「……うん! 絶対だよ!」

「おう。命を賭けるよ……って、あまりにも不謹慎過ぎるか」

「ハハッ! それウケる! 最高だよ順平!!」

 理夏は泣きながら、嬉しそうに大きく笑った。
 ……うん。
 やっぱり理夏の笑顔は最高に素敵だ。

「なあ理夏」

「なぁに?」

「ひとつだけ許可を頂きたいんだけど」

「うん」

「理夏のお願いとは言え、さすがにすぐ気持ちを切り替えて『よしっ、そんじゃ次の人探すか!』なんてなれるわけ無いから」

「うん」

「だから、僕が作ったこのロンガヴィタ。この種を植えて花が咲いて散るまでは……理夏のことだけ考えてても良いかな? その間だけは、理夏のことを……」

 泣きすぎて枯れたと思っていた涙が、堰を切ったように両目から溢れ出した。
 それを見た理夏もワンワン泣き出す。

「う……うん……もちろん! ……もちろんだよ。私だって本当は……ううん。その花が咲いてる間だけ、私は順平を独り占め! へへっ、なんかちょっと嬉しいな」

「お……おう! 理夏、愛してるよ」

「うん! 順平、私も愛してる」

 僕たちは再び、お互いを強く抱きしめ合った。

 それからすぐ、あれだけうるさかったブレスレットが、静かにそっと鳴り止んだ。