「……理夏!」
「順平!!!」

 廊下の向こうに理夏の姿が見えた。
 呆気にとられる僕に向かって、理夏が全速力で駆け寄ってくる。

 ブルブルブルッ!
 ブルブルブルッ!
 ブルブルブル……ピー!!!
 ピーピーピー!!!

 今まで聞いたことの無い警告音がけたたましく鳴り響く。
 気がつくと、僕たちは強く抱きしめ合っていた。

「理夏! 今すぐ離れないと……理夏が……」

「やめて! 離れないで! もう耐えられない! 順平から離れたら私の心が死んじゃうよ!!」

 理夏は号泣しながら耳元で叫んだ。

「でも……このままじゃ……」

 僕も泣きながらそう呟いてはいるものの、両手は言葉に反してギュッと理夏を抱きしめたままだった。
 加速度的に激しさを増す警告音。

 このままでは、理夏を殺すことになってしまうのが分かっているのに、離れることが出来なかった。
 頭では、無理矢理にでも彼女を振り払って廊下を走り、家の外に飛び出して、とにかく少しでも遠くに離れなければ……と思っているのに、心がそれに従わない。

 僕たちは泣きながら、ずっとその場で抱き合っていた。