理夏《りか》と初めて会ったのは高校1年生の頃。
 僕たちは同じ学校に通うクラスメイトだったが、何度か言葉を交わしたことがある程度で、特に仲が良かったわけでは無かった。

 僕は僕で、同じバイトの女子と付き合うことになって浮かれまくってる時、理夏も先輩だかと付き合ってるなんて噂が聞こえて来た、ぐらいの関係のまま高校卒業。
 特に彼女のことを意識することも無く、大学進学、卒業、そして社会人になった。


 そんな彼女と再会したのは、とある年の同窓会。
 みんなそれぞれ仕事やら人間関係やらに行き詰まりがちで、口から出るのがほとんど愚痴の類いといった重い雰囲気の中、バカみたいにケラケラと笑っている女、それが理夏だった。

 僕自身、元々やりたかった仕事とはまったく違う職に就いていて、転職しようかどうか真剣に悩んでいる時期で、脳天気に笑う理夏の姿を見て正直ちょっとイラッとしてしまった。

 酒が入っていたのもあって、思わず「うるせーなもう」と口に出してしまう。
 すると理夏は、

「あれ、順平《じゅんぺい》くんじゃん、久し振り! 相変わらず格好いいね!」

 と、笑いながら僕の背中をポンと叩いた。