顔を上げるとまずはコート内にいる焦った表情の心が目に入った。


次に真っ白なバレーボールがこちらへ向かって飛んでくるのが見える。


咄嗟に手を伸ばしてボールをつかもうとする。


しかしボールは思った以上に勢いがあり、私の手をすり抜けてしまった。


誰が放ったボールかわからない。


故意か偶然かもわからないまま、そのボールは私の頭に激突していた。


強い衝撃に脳がグラリと揺れる感覚がある。


次に体が崩れ落ちた。


「イト!」


心の叫び声に答えることができない。


私は薄れていく意識の中、心が駆け寄ってくる姿を見ていたのだった。