平塚くんはいつか私の手を叩いてしまったときと同じように頭を下げていた。


それがなにを意味している謝罪なのかすぐに理解した私はムッとして平塚くんを睨みつけた。


顔を上げた平塚くんがたじろぐのがわかる。


「謝ってもらうようなこと、なにもしてないでしょ」


自分でもびっくりするくらいキツイ口調だった。


平塚くんはなにも答えずにジッとこちらを見つめている。


「私は自分がしたいと思ったことをしただけ。間違えてるなんて思ってない」


それが原因でいつもどおりの日常は崩れてしまったかもしれない。


だけど、平塚くんが謝るべきじゃない。


それだけは絶対に違うと言い切れる。


しばらくの間2人の間に沈黙が降りてきた。


平塚くんはどう返事をしようかと困っているのかと思った。


が、ふいにプッと吹き出す音が聞こえてきて私は目を見開いた。


見ると平塚くんはおかしそうに笑い始めているのだ。


手を口にあてて我慢しているものの、我慢しきれていない。


笑われるようなことをした覚えはなくて、私はキョトンとして平塚くんを見つめる。


笑った顔もやっぱりカッコイイ。