大島くんのことばかりで、平塚くんの気持ちを無視しているクラスメートたちにも。


いつもどおりの日常がいい。


毎日毎日、平坦でいい。


触らぬ神に祟りなし。


そんな考え方を忘れてしまっていた。


「消すから」


ぼーっと座ったままの平塚くんへ向けて言った。


「え?」


「消すから、これ」


ラクガキを指差してから、掃除道具入れから雑巾を取り出す。


「あ、俺、やるから」


雑巾を濡らすために廊下へ出た所で、ようやく平塚くんが追いついてきた。


「どうして黙って座ってるの」


立ち止まり、振り向いて長身の彼をにらみあげる。


平塚くんはたじろいだ様子で視線を泳がせた。


「俺は別に……」


何も感じていないとでもいうつもりだろうか。