少しだけ可愛そうに感じたけれど、視線がぶつかったときの冷たい反応を思い出すと胸の奥がモヤモヤした。


やっぱり、転校初日なんだからもう少し愛想よくすればいいのに。


心が言うとおりの変人で間違いなさそうだ。


「イトはどうなの?」


「え?」


突然話をふられてまばたきをする。


「恋人作らないの?」


「あ~……私は、今まで通りの生活ができればそれでいいかな」


また雨が降り出してもおかしくない空を見上げて呟くと、隣で心が盛大なため息を吐き出した。


「私たち高校生だよ? 青春真っ盛りだよ? そんなのでいいの?」


自分の理想を『そんなの』と呼ばれて少しムッとしたけれど、私は頷いた。


「私はそんなのがいいの」


心は納得できない様子で「ふぅん?」と、首をかしげたのだった。