授業後のホームルームが終わってすぐに、わたしの机のそばに男子生徒がやってきた。
捲ったシャツの袖から伸びた、少し日に焼けた腕。その左手首には、シルバーのトップスが付いた青色のコードブレスレットが嵌められている。それは、わたしが彼を識別するための大切な目印だ。
「榊、帰ろ」
わたしが顔を上げるのとちょうど同じタイミングで声をかけてきたのは、時瀬 蒼生くん。
最近の彼は、わたしに声をかけるときに手首の目印が見えやすいように正面に立つ。そして必ず、「榊」と最初にわたしの名前を呼んでから話し始める。それらは全部、わたしが彼のことを少しでも識別しやすくなるようにと考えてくれた気遣いだ。
「優しい」と言ったら、時瀬くんは否定するけど、彼は初めて話したときからずっと、わたしに優しい。
そんな時瀬くんから、突然の告白を受けたのは一ヶ月前。
驚いたし信じられない気持ちでいっぱいだったけど、時瀬くんからの告白は素直に嬉しくて。現在、わたしと彼は付き合っている。