武下は、おれの中学のときからの同級生で、中三のときから付き合ってる子がいる。
その彼女が定期的に「蒼生くんと仲良くなりたい子がいる」と言って友達の女子を紹介しようとしてくるのだが、それがかなり面倒臭い。
毎回断るのも武下に悪いから、たまに気が向けば紹介されてみるけど、連絡先を交換しても、そのあとふたりで会いたいなって思う子は今のところいない。武下の彼女の友達は押しの強い子が多いから、会うと疲れる。
武下の彼女は、おれが押しの強い派手目な子がタイプだと思ってるみたいだけど、実際にはそんなこともない。
おれが自分の隣に並んでほしいなって思うのは、たぶん──。
そう考えながら、視線がまた無意識に榊のほうに向いてしまっていることにハッとする。
肝心の榊はおれの視線に全く気付いていないけれど、彼女のそばにいる江藤 陽菜と目が合った。その瞬間、江藤が大きな目でおれのことを威嚇するように睨んでくる。
江藤は隣のクラスの女子なのだが、同じクラスに友達がいないのか、榊と仲が良すぎるのか、休み時間になると必ず榊のところにやってくる。
いつも榊にぴったりと張り付いている江藤は、おれが榊に向ける視線に気付いていて。今みたいに目が合うと、おれのことを鋭い眼差しで牽制してくる。江藤の目は、今日も怖い。
顔を引き攣らせながら視線を外すと、武下が体重をかけるようにして、おれの肩に腕をのせてきた。