3、どうやら話さないといけないようです。



家に帰って、すぐに両親に相談した。
「明日、余命のことクラスのみんなに伝えることにした」
これを聞いた時2人はとても驚いたが、私の顔を真剣に見た。
「沙奈恵がちゃんと考えて、言おうとしているんだから私たちはそれを止めない。だけどこれだけは約束して」
するとお母さんは私の方をさっきよりも強く、優しく見つめて、
「なにか悩んだら、すぐにじゃなくてもいいから話して欲しい。だって私たち、沙奈恵よりも人生経験豊富だからね」
そう言ってお母さんは微笑んだ。

次の日、私が教室に入るとやはり静かになった。それでも私は驚かずに自分の席に座った。今はそれよりも今日の帰りに言うことをまとめなければいけない。
しばらくしてから先生が来た。先生が教室に入ったときまだ少し時間があったから私は言った。
「今日の昼休み時間はありますか?少し大事な話があるので」
先生は頷いた。きっと伝わっているだろう。私の余命関係のことだと。

昼休み、私は先生と空き部屋に行き、話をした。
「私、余命のことをクラスのみんなに言うことにしました。察していると思いますが、クラスの中でも少し話題になっていたので、私の口からちゃんとみんなに伝えようと思って」
先生は頷いた。
「…言うことにしたんですね。先生はその沙奈恵さんの意志を尊重します。……多分余命のことをクラスのみんなに話したらきっと生活が大きく変わると思います。でも安心してください。先生がちゃんとサポートしますから!」
先生は私を不安にさせないように笑顔で言った。
「ありがとうございます。そう言って貰えると私も少し楽に話せます」
それから、先生と具体的にどのように話すかの相談をした。

今日の授業が終わりみんなが、帰れるー、眠い、など言っている中ホームルームが始まった。先生が手紙を配ったり、明日の話をしている。
そしてその時がきた。
「皆さん、沙奈恵さんから大事な話があります」
みんながザワつく。それはそうだろう。昨日から余命の話が憶測で飛び交っていたのだから。私は自分の席を立ち、教卓に移動する。
教卓に立つとみんなが私を見ている。今、この状態で話すのはとても怖い。それでも昨日話すと花音に約束したから、怖くても、少しずつ頑張って話す。
「……皆さん、昨日から少し話題になっていたことを話します」
さっきよりもみんながじっと私の方を見ている。
「話題に上がっていたのは『私には余命が少ないのでは?』ということだと思います」
何人かが頷く。やはりそうだったのか。
「……結論から言うと、私には余命があります」
クラスが再びザワつく。そして、花音は下を向いて黙っている。
「私がそれを知ったのは今から2ヶ月くらい前の3月です。その時に余命は約1年と言われました。なので私の今の余命は残り10ヶ月くらい、来年の3月には死にます。つまり、私はみんなと一緒に学校を卒業できません」
自分で言っていて悲しい。それでも、最後まで私が伝えたいことを自分の口から話さないと。少し視界がぼやけてきたけど話す。
「私が言いたいのは、特別視しないで欲しい、みんなと対等に扱って欲しい、ということです。最後の1年が特別扱いされて終わるのは私が嫌なので。……ここまで真剣に聞いてくれてありがとうございました」
私はみんなに頭を深々と下げる。クラス内に静寂がおとずれる。しかしその静寂を破ったのは1つの拍手だった。
私はチラッとその音の方向を見ると花音が拍手していた。花音はわたしを力強く見つめていた。そしてその音を起点にクラス中が拍手で包まれた。

下校時間、鼓動が速い中帰る支度を始めた。不意に顔を上げると前には花音が立っていた。
「沙奈恵!一緒に帰ろ!」
「うん」
いつもと変わらない笑顔。その顔を見れて私はとても嬉しかった。