2、どうやら面倒なことになったようです。



先生と話しをした次の日。私は変わらず1人で登校した。
教室に着くと違和感があった。さっきまで廊下に聞こえるくらい騒がしかったのに、私が教室に入った瞬間少し静かになった。そして何人かは私を指で指して何か言っていた。声が小さくて聞こえないが、きっと良くないことだろう。私は近くにいた花音に、話しかけた。
「花音?何かあったの?」
花音は下を向いた。多分、いや絶対良くないことだとわかっている。それでも聞かないといけないそんな気がした。花音はひと呼吸おいて言おうとした……がチャイムが鳴ってしまった。
「ごめん沙奈恵、後で話すね……」
そう言ってすぐに席に戻ってしまった。今始まったホームルームも全く耳に入らなかった。
それからも、話そうとしても避けられたり、逃げられたりした。
帰宅時間、私はいつも以上に早く支度をし下駄箱で花音を待った。
それから数十秒後、花音が来た。私と目が合ったが、気まずそうに目を背けた。
いつもの私だったら無理をして聞くようなことはしないが、今は無理をしてでも聞く。
「ねぇ、花音どうしてそんなに避けるの?何かあったの?答えてよ!」
「だって!沙奈恵、死んじゃうんでしょ……」
……え?どうして、それを……。
「花音、どこで聞いたの……?」
「……ちょっと場所変えて話そっか…。ほら周りに人がいるし……」
そう言われて周りを見た。さっきまで大きな声で話していたからか、周りの人から見られている。
私は頷き、花音とゆっくり歩いた。

着いた場所は私たちにとって思い出の場所だった。私と花音の家から程よく離れた場所で、小さい時によく遊んでいた公園だ。花音はブランコに座り、私もその隣に座る。
そしてポツポツと話し出す。
「…実はね昨日、放課後に沙奈恵が先生と話したところを見て、少し聞いてた生徒がいたの。あっ、でも意図的に聞こうとしたんじゃなくて、忘れ物を取りに行こうとした時に偶然聞いちゃって、その会話の中に余命が〜〜って聞こえて、もしかしたら死んじゃうんじゃないかっていう勝手な憶測が飛び交って……」
……なるほど、そうだったのか。だったら私も本当のことを話した方が……。
私が悩んでいると花音は言ってきた。
「いや、無理して話さなくていいんだよ。それに私たちが勝手に考えて話してるだけだから気にしなくていいんだよ……」
そう言って花音はブランコから立ち上がり、公園から出ようとする。多分私に何も言わせないようにしている。確かに私としてもそれが楽だ……でも、それでも!
「待って!」
花音が私に背を向けて止まった。
「その…まだ言いたいことがまとまってないけど……明日!明日学校で皆の前で話す。だから、ちゃんと聞いて欲しい」
花音はそれを聞くと再び歩き始めた。
花音のために、みんなのために、そして私のためにちゃんと話そう。