1、どうやらクラスはいい感じのようです。



春休みが終わり、3年生になった。
学校内で私の余命のことを知っているのは去年の担任の先生とその他数人。そしてこのことは極力話さない。そう再確認しながら学校への道を歩いた。

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新しい教室に入ると、いくつか空席はあるものの去年と同じメンバーが数人、去年と違うメンバーが数十人いた。去年と同じメンバー中には幼い頃からの親友の、花音(かのん)がいた。活発な彼女は私と対照的な存在だ。
私が席に座ると花音はすぐに近寄ってきた。
「やったね沙奈恵!今年もクラス一緒だね!」
「そうだね花音、今年もよろしく」
「今年だけじゃなくて、これからもよろしくね!」
「……うん、よろしくね」
少し言い淀んでしまった。花音は私が病弱なことは知っているが、余命のことを伝えていない。だから、これは皮肉などではなく純粋に心から思っているはずだ。
私がすぐ返答しなかったのに花音は疑問を持ったのか少し首を傾げたが、元に戻り春休みにしたことや、今年したいことなどを話した。
そして、鐘が鳴った。生徒たちは席に戻っていき担任の先生が入ってきた。
先生は去年と同じ桜田先生という女性だった。考えすぎかもしれないが、私が少しでも楽できるように花音と同じクラスにしたり、担任も同じ人にしたのか?
そんなことを考えているとホームルームが終わっていた。

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クラスに慣れ始め、次第にクラス内でグループができてきた5月中旬、授業の合間に桜田先生に呼ばれた。
「少し大事な話があるから、放課後教室の残ってくれない?」
きっと余命関係のことだ。そう思いながら頷いた。先生は「ありがとうね」微笑みながら言って去って行った。

放課後、いつもなら花音と一緒に帰るが今日は、少し用事があるからごめん。と言い先に帰らせた。
待つこと3分、教室には私と桜田先生だけ残った。
先生が教卓の椅子に座ったのを見て、私は対面の椅子に座る。私が椅子に座ったのを見ると先生は言ってきた。
「花里さん、学校楽しいですか?」
「はい、まぁ花音と一緒のクラスで良かったです。…でも先生、今日呼んだのは学校生活の事じゃなくて、余命のこと……ですよね」
「えぇ、その…あまり人には言いたくないですよね…?」
先生は優しく言ってきた。
これは私も何度も考えたことがある。正直どちらとも言えない。もし余命のことを話したら周りの対応が変わると思う。それは花音も例外では無いはずだ。花音の対応が変わるのはなんか嫌だ。でも余命のことを話さないと、生きている間、皆に嘘をつくことになる。それも嫌だ。
「正直、今はどちらとも言えません」
私は俯きながら呟いた。
「そう…でも先生は、それでいいと思います。でもこれだけは約束してください。悩んだらちゃんと相談してください。いいですね?」
私と目を合わせ優しく言った。
私はそれに答えるように頷いた。