2、どうやら送り先は私のようです。
沙奈恵と公園で話した次の日、私はスマホのアラーム音で目が覚める。私は毎朝、沙奈恵が亡くなっていないか不安になる。私が心配してもどうしようもないのに。
それから私は身支度を終え、沙奈恵との集合場所に行く。これまで沙奈恵は1人で学校に行っていたが、いじめがあってからは私と一緒に行くようになった。べつに約束をした訳では無い。私も沙奈恵も何となく一緒に行きたいと思ったからだろう。
いつもは沙奈恵が私より少し早く来ているが、今日はまだ来ていなかった。私はスマホをいじって待つ。
その時私の中で嫌な考えが浮かぶ。もしかしたら沙奈恵は……。いやそんな訳ない。昨日まで普通に話していたんだ。そんなことあるわけない。きっと沙奈恵は寝坊をしたんだ……。そうに違いない……。
しかし1度意識すると嫌な考えばかり浮かんでしまう。
私は沙奈恵に『寝坊した?』とLINEを送った。しかしいくら待っても既読すらつかない。
私はさらに不安になる。そして自分でも気付かぬ間に沙奈恵の家に向かって走り出していた。
沙奈恵の家に着き、1度深呼吸をする。そしてインターホンを押す。
数秒してから沙奈恵のお母さんがインターホン越しに言ってくる。
「……花音ちゃん、どうかした?」
その声はどこか悲しそうだった。もしかしたらと思いながら、私は聞く。
「あ、あの……沙奈恵さんは居ますか?」
返事は返ってこないが、その代わりに家のドアが開いた。
「……花音ちゃん、少し見て欲しいものがあるの……」
私は頷く。そして、その時点で何となく察してしまった。花音はもうこの世には居ないのだと。
リビングに入ると沙奈恵のお母さんに椅子に座るよう促された。私が椅子に座るのを見て、沙奈恵のお母さんが向かいに座る。
「……気づいてるかもしれないけど、沙奈恵はもう……」
その言葉に私は胸が苦しくなる。1週間以内に死んでしまうことは知っていたけど、やはり事実を告げられると辛い。
「……それで沙奈恵は生きている間に手紙を書いてたみたいで、封筒が置いてあったの」
そう言うと沙奈恵のお母さんは『花音へ』と書かれた封筒を私の前に置いた。
封筒の中には何枚かの手紙と私と夏休みの時に買ったペンが入っていた。
人の家で手紙を読むのはあまりよくない。しかし今だけはそのマナーを破って手紙を読む。沙奈恵のお母さんもこの行動を予想していたようで、私を咎めなかった。
『花音へ
この手紙を読んでいるということは私はもうこの世にはいません……。まぁ、そんなベタな始まり方だけど、私がいないっていうのは本当だと思う。でも悲しまないで欲しい。昨日公園で話したじゃん。花音の持ってるペンと私の持ってるペンが一緒にあれば『私たちはいつでも一緒にいる』って思えるよね。
さてここからは、花音に伝えたいことを書くね。多分全部書いたら手紙が足りなくなっちゃうから一部だけだけど……。まず花音には色々なことに感謝してるよ。例えば、小さい時から遊んだり話したりしてくれたこと。花音が知っての通り私は小さい時から病弱であまり外に出れなかったけど、病室に来て話したりしてくれて本当に嬉しかった。
他にも色々あるんだけど最近嬉しかったことは私を助けてくれたこと。私がいじめられてるとき、声をかけてくれて、話をちゃんと聞いてくれて解決まで手伝ってくれて嬉しかった。でも花音が井上さんに対して、急に私のいい所(?)を言い出した時は驚いた。それでも、花音はちゃんと私のことを考えてくれてるんだなって思ってそれも嬉しかった。
夏休みに花音と遊んだのはめっちゃ楽しかったよ。普段の私なら買わない方な服を買ったり、2人でお揃いのものを買ったりできて嬉しかった。花音は私と遊んでどう思ったかは分からないけど、私にとっては残り少ない時間の中でとても楽しい事だった。本当に花音と一緒にいれてよかった。
最後に、花音にはいつまでも悲しんで立ち止まらずに、前を向いて生きてほしい。人が死んだことから、立ち直るのはとても難しいことだと思う。それでもそのことに囚われてたらいつまで経っても成長できない。だったらこの悲しさを糧に、花音にはさらに成長してほしい。
ここからはあんまり関係ないんだけど、この手紙を書くとき、少し散歩してから書いたんだよね。書きたいことはあるんだけど、それを文字にして表すのが難しくて、それで息抜きに散歩をして、色んな景色を見ていくうちに、頭の中がスッキリして、書きたいことがまとまってきた。
多分、花音もまだ心の整理ができてないと思う。だから気が向いたら少し散歩してみるといいよ。きっと心が落ち着くと思うから。
沙奈恵より』
この手紙を読み終わった時、私はどんな表情をしていたか分からない。それでも手紙が少し滲んでしまったのは覚えている。
そして私は沙奈恵の家を出る。私は2つのペンを握って思う。
まだ気持ちの整理はできていない。このまま前を進んで行けるか分からない。だったらどうするか?そんなの簡単な事だ。
私は学校とは反対の方向に歩き出す。
かつて私の友達がしたように。
沙奈恵と公園で話した次の日、私はスマホのアラーム音で目が覚める。私は毎朝、沙奈恵が亡くなっていないか不安になる。私が心配してもどうしようもないのに。
それから私は身支度を終え、沙奈恵との集合場所に行く。これまで沙奈恵は1人で学校に行っていたが、いじめがあってからは私と一緒に行くようになった。べつに約束をした訳では無い。私も沙奈恵も何となく一緒に行きたいと思ったからだろう。
いつもは沙奈恵が私より少し早く来ているが、今日はまだ来ていなかった。私はスマホをいじって待つ。
その時私の中で嫌な考えが浮かぶ。もしかしたら沙奈恵は……。いやそんな訳ない。昨日まで普通に話していたんだ。そんなことあるわけない。きっと沙奈恵は寝坊をしたんだ……。そうに違いない……。
しかし1度意識すると嫌な考えばかり浮かんでしまう。
私は沙奈恵に『寝坊した?』とLINEを送った。しかしいくら待っても既読すらつかない。
私はさらに不安になる。そして自分でも気付かぬ間に沙奈恵の家に向かって走り出していた。
沙奈恵の家に着き、1度深呼吸をする。そしてインターホンを押す。
数秒してから沙奈恵のお母さんがインターホン越しに言ってくる。
「……花音ちゃん、どうかした?」
その声はどこか悲しそうだった。もしかしたらと思いながら、私は聞く。
「あ、あの……沙奈恵さんは居ますか?」
返事は返ってこないが、その代わりに家のドアが開いた。
「……花音ちゃん、少し見て欲しいものがあるの……」
私は頷く。そして、その時点で何となく察してしまった。花音はもうこの世には居ないのだと。
リビングに入ると沙奈恵のお母さんに椅子に座るよう促された。私が椅子に座るのを見て、沙奈恵のお母さんが向かいに座る。
「……気づいてるかもしれないけど、沙奈恵はもう……」
その言葉に私は胸が苦しくなる。1週間以内に死んでしまうことは知っていたけど、やはり事実を告げられると辛い。
「……それで沙奈恵は生きている間に手紙を書いてたみたいで、封筒が置いてあったの」
そう言うと沙奈恵のお母さんは『花音へ』と書かれた封筒を私の前に置いた。
封筒の中には何枚かの手紙と私と夏休みの時に買ったペンが入っていた。
人の家で手紙を読むのはあまりよくない。しかし今だけはそのマナーを破って手紙を読む。沙奈恵のお母さんもこの行動を予想していたようで、私を咎めなかった。
『花音へ
この手紙を読んでいるということは私はもうこの世にはいません……。まぁ、そんなベタな始まり方だけど、私がいないっていうのは本当だと思う。でも悲しまないで欲しい。昨日公園で話したじゃん。花音の持ってるペンと私の持ってるペンが一緒にあれば『私たちはいつでも一緒にいる』って思えるよね。
さてここからは、花音に伝えたいことを書くね。多分全部書いたら手紙が足りなくなっちゃうから一部だけだけど……。まず花音には色々なことに感謝してるよ。例えば、小さい時から遊んだり話したりしてくれたこと。花音が知っての通り私は小さい時から病弱であまり外に出れなかったけど、病室に来て話したりしてくれて本当に嬉しかった。
他にも色々あるんだけど最近嬉しかったことは私を助けてくれたこと。私がいじめられてるとき、声をかけてくれて、話をちゃんと聞いてくれて解決まで手伝ってくれて嬉しかった。でも花音が井上さんに対して、急に私のいい所(?)を言い出した時は驚いた。それでも、花音はちゃんと私のことを考えてくれてるんだなって思ってそれも嬉しかった。
夏休みに花音と遊んだのはめっちゃ楽しかったよ。普段の私なら買わない方な服を買ったり、2人でお揃いのものを買ったりできて嬉しかった。花音は私と遊んでどう思ったかは分からないけど、私にとっては残り少ない時間の中でとても楽しい事だった。本当に花音と一緒にいれてよかった。
最後に、花音にはいつまでも悲しんで立ち止まらずに、前を向いて生きてほしい。人が死んだことから、立ち直るのはとても難しいことだと思う。それでもそのことに囚われてたらいつまで経っても成長できない。だったらこの悲しさを糧に、花音にはさらに成長してほしい。
ここからはあんまり関係ないんだけど、この手紙を書くとき、少し散歩してから書いたんだよね。書きたいことはあるんだけど、それを文字にして表すのが難しくて、それで息抜きに散歩をして、色んな景色を見ていくうちに、頭の中がスッキリして、書きたいことがまとまってきた。
多分、花音もまだ心の整理ができてないと思う。だから気が向いたら少し散歩してみるといいよ。きっと心が落ち着くと思うから。
沙奈恵より』
この手紙を読み終わった時、私はどんな表情をしていたか分からない。それでも手紙が少し滲んでしまったのは覚えている。
そして私は沙奈恵の家を出る。私は2つのペンを握って思う。
まだ気持ちの整理はできていない。このまま前を進んで行けるか分からない。だったらどうするか?そんなの簡単な事だ。
私は学校とは反対の方向に歩き出す。
かつて私の友達がしたように。