2、どうやら手紙を書き始めたようです。



昨日の話を聞いて私たちはショックを受けた。しかも厄介なことに1週間『以内』だから明日にはもう目覚めないかもしれない、という不安があった。

翌日、1日目は無事に朝がきた。
私は安堵したが、そうゆっくりしている暇はない。これまでよりも1日1日を大事にしていかないといけない。
今日は土曜日だから学校はない。それでもいつもより早く起きた。少しでもやり残したことを減らすためだ。
しかし考えてみるとやり残したことはあまりない。だけど一つだけ絶対にやらないといけないことがある。
それは手紙を残すことだ。
私はそう考えて、タンスの中から便箋を取り出す。
だけど、いざ書こうとすると何を書いたらいいか分からない。私は自分の部屋を歩き回る。
しかしこうしても何も思いつかない。そして私は思いたって散歩をすることにした。こういう時は気分を変えるために散歩をした方がいい。
時刻は5時前で、外は少し明るい。普段の私ならまだ寝ている時間だ。
リビングに『散歩してくる』とメモを残して、外に出た。
外は少し寒く、普段なら交通量が多い道路も静かだった。
「……静かでいいなぁ」
周りに人がいないから思わず独り言を呟いてしまう。私には明日があるかは分からない。でも明日があるならまたこんな風に静かな場所を歩いてみたい。
そうだ、今思ったことを手紙に書いてみよう。私はそう考え忘れないようにスマホを取りだし、メモ帳に打ち込んだ。
そしてスマホをしまいまた歩き始める。
それから少しすると交通量が増えてきた。スマホの時間を見ると6時を過ぎていた。
なんだ、もうそんなに歩いたのか。
私は早歩きで家に戻り、手紙を書いた。これまでの感謝、さっきの散歩で感じたことなどを書いていたらあっという間に1枚埋まってしまった。それでも書き足らず、私は2枚目の便箋を取り出す。

その日の夜。部屋で独り言のように呟く。
「……私にはもう土曜日はこない」
そしてベッドに入って、目を瞑り祈る。
明日、また朝が来ますように。