1、どうやら余命が短くなったようです。
花音と遊んでから学校が始まるまで、私はほとんど家の中で過ごした。外が暑いというのもあるが、小さい時から入院していることが多く、あまり体力がなくすぐに疲れてしまうからだ。
〇〇〇〇〇〇✕✕✕✕✕✕
夏休みも終わり、約1週間がたった9月のある日、それは突然だった。
体育の授業中に目眩がした。最初は平気だと思っていた。私は受けれる数の少ない授業を少しでも多く楽しみたかった。しかしそれが仇となり、どんどん酷くなってきた。
「……かの……ん……」
近くにいた花音に声をかけようとしても声がどんどん小さくなる。遂に私は目の前が真っ暗になって倒れてしまった。
近くで私を呼ぶ花音の声がする。きっと、大丈夫!?と言っているのだろう。
遠くから人が走ってくる音が聞こえる。多分先生や他の生徒が様子を見に来たのだろう。
こんなことになるなら最初から無理をしないで授業を休めばよかったな。
そんな後悔をしている間に私の意識は途切れてしまった……。
懐かしい夢を見た。私が小学生の時の夢だ。その時から病院に入院していて、部屋の中にいてやることといえば、お母さんやお父さん、看護師さんなどと話したり、窓の向こうにある学校を眺めるなどだ。
その日の私はお母さんがいるにもかかわらず、窓の外を眺めていた。その視線は学校の周りを元気に走る、下校中の生徒たちに向いていた。
「お母さん、いつになったら私もあんなふうになれるの?」
こちらを向いて、小さい時の私が言う。その目は潤んでいた。今でも覚えている。あの時の私は元気に走る子たちに憧れていた。
お母さんは優しく語りかける。
「大丈夫よ、もう少ししたら沙奈恵もあんな風に元気に走れるよ」
そう言って私の頭を優しく撫でた。
その時の私の顔はとても嬉しそうだった。きっとその言葉と、お母さんに頭を撫でられたことの2つが嬉しかったのだろう。
夢から覚めると、何度も見た事のある天井があった。しかし家ではない。そしてここ特有の匂いがし、窓からはオレンジ色の光が入ってきた。
何があったのか確かめるために少し首を横に向ける。そこにはお母さんとお父さん、そして花音が居た。
「沙奈恵!」
3人が一斉に言う。その後色々なことを言っていたが、私は聖徳太子ではないからそんなに聞き取れない。
私は両手を前に出して話すのを止めさせる。
3人が静かになったのを見て私は言う。
「えっと……私も何があったかよく分かってないんだけど……花音、何があったの?」
「えーっと、どこから話せばいいのか分からないけど……まず沙奈恵は体育の授業中に倒れたことは覚えてる?」
私は頷いた。しかしここから先は知らない。
「そっか。でもそこからは先生が救急車を呼んで、沙奈恵が病院に運ばれただけだよ」
花音の話を聞いたあと時計を見ると5時を過ぎていた。確か体育の授業があったのは10時半だったから、7時間以上眠っていたようだ。
そう考えていると、部屋の扉を優しくノックする音がして、病院の先生が部屋に入ってきた。
先生は私が起きているのを見て言った。
「沙奈恵さん、これから大切なことを言います」
そして少し間を置いてから、
「……沙奈恵さんの余命は後1週間以内です」
……残り……1週間……?
私は焦りを通り越して呆然とした。
あまりに急な報告で脳が追いついていない。
何かを言おうとしても言葉にならない。
しかしこれだけは言える。
今、こうしている間にも私の死までのカウントダウンは進んでいる。
花音と遊んでから学校が始まるまで、私はほとんど家の中で過ごした。外が暑いというのもあるが、小さい時から入院していることが多く、あまり体力がなくすぐに疲れてしまうからだ。
〇〇〇〇〇〇✕✕✕✕✕✕
夏休みも終わり、約1週間がたった9月のある日、それは突然だった。
体育の授業中に目眩がした。最初は平気だと思っていた。私は受けれる数の少ない授業を少しでも多く楽しみたかった。しかしそれが仇となり、どんどん酷くなってきた。
「……かの……ん……」
近くにいた花音に声をかけようとしても声がどんどん小さくなる。遂に私は目の前が真っ暗になって倒れてしまった。
近くで私を呼ぶ花音の声がする。きっと、大丈夫!?と言っているのだろう。
遠くから人が走ってくる音が聞こえる。多分先生や他の生徒が様子を見に来たのだろう。
こんなことになるなら最初から無理をしないで授業を休めばよかったな。
そんな後悔をしている間に私の意識は途切れてしまった……。
懐かしい夢を見た。私が小学生の時の夢だ。その時から病院に入院していて、部屋の中にいてやることといえば、お母さんやお父さん、看護師さんなどと話したり、窓の向こうにある学校を眺めるなどだ。
その日の私はお母さんがいるにもかかわらず、窓の外を眺めていた。その視線は学校の周りを元気に走る、下校中の生徒たちに向いていた。
「お母さん、いつになったら私もあんなふうになれるの?」
こちらを向いて、小さい時の私が言う。その目は潤んでいた。今でも覚えている。あの時の私は元気に走る子たちに憧れていた。
お母さんは優しく語りかける。
「大丈夫よ、もう少ししたら沙奈恵もあんな風に元気に走れるよ」
そう言って私の頭を優しく撫でた。
その時の私の顔はとても嬉しそうだった。きっとその言葉と、お母さんに頭を撫でられたことの2つが嬉しかったのだろう。
夢から覚めると、何度も見た事のある天井があった。しかし家ではない。そしてここ特有の匂いがし、窓からはオレンジ色の光が入ってきた。
何があったのか確かめるために少し首を横に向ける。そこにはお母さんとお父さん、そして花音が居た。
「沙奈恵!」
3人が一斉に言う。その後色々なことを言っていたが、私は聖徳太子ではないからそんなに聞き取れない。
私は両手を前に出して話すのを止めさせる。
3人が静かになったのを見て私は言う。
「えっと……私も何があったかよく分かってないんだけど……花音、何があったの?」
「えーっと、どこから話せばいいのか分からないけど……まず沙奈恵は体育の授業中に倒れたことは覚えてる?」
私は頷いた。しかしここから先は知らない。
「そっか。でもそこからは先生が救急車を呼んで、沙奈恵が病院に運ばれただけだよ」
花音の話を聞いたあと時計を見ると5時を過ぎていた。確か体育の授業があったのは10時半だったから、7時間以上眠っていたようだ。
そう考えていると、部屋の扉を優しくノックする音がして、病院の先生が部屋に入ってきた。
先生は私が起きているのを見て言った。
「沙奈恵さん、これから大切なことを言います」
そして少し間を置いてから、
「……沙奈恵さんの余命は後1週間以内です」
……残り……1週間……?
私は焦りを通り越して呆然とした。
あまりに急な報告で脳が追いついていない。
何かを言おうとしても言葉にならない。
しかしこれだけは言える。
今、こうしている間にも私の死までのカウントダウンは進んでいる。