「忙しいから手短に頼む」

「私と結婚してください」

俺はお嬢さんの冗談に付き合っている余力は持ち合わせていなかった。

「冗談言うなら帰ってくれ」

麗子は真剣な眼差しで、俺に食い下がって来た。

「今、錑様を助けて差し上げられるのは私だけです」

「悪いが何を言ってるのか理解出来ない」

「宇佐美不動産と契約してください、そうすれば桂木ホテルリゾートは持ち直します、でも父が、契約破棄に相当立腹しています、私のお願いなら父も受け入れてくれると思うんです、でも私にもメリットがないと、だから私と結婚してください」

「それは出来ない」

「桂木ホテルリゾートの全社員を露頭に迷わすおつもりですか」

確かに俺一人ならどうなっても構わないが、社員を露頭にに迷わす事は何が何でも避けなければならない。

このままだと、桂木ホテルリゾートは倒産に追い込まれる、なんとかしないと……

「少し時間をくれないか」

「わかりました、良いお返事をお待ちしております」

麗子は社長室を後にした。

入れ替わりに秘書の高城が入ってきた。

「社長、何か手を打ちませんと桂木ホテルリゾートは倒産に追い込まれます」