ある日錑の病室に北山先生が錑の病状の確認にやってきた。

「錑、気分はどうだ?」

「だいぶ楽になった、眠れるようになったし、頭痛も治まってきた、食事も美味い」

「そうか、なら退院だな」

「あ、なんか急に頭痛が……」

「おい、お前は子供か」

「もう少し入院させてくれ、頼む」

「わかった、ただし条件がある」

「なんだ」

「みゆちゃんに手を出すな」

「まだ出してねえけど」

「この間、みゆちゃんがお前の病室から戻って来た時、手が震えて、過呼吸寸前だったんだぞ、言ったよな、みゆちゃんの意に沿わないことはさせないようにって……何したんだ?」

「何って、だからまだ何もしてねえって」

「じゃ、何をしようとしたんだ」

錑はしばらく黙っていたが、覚悟を決めて口を開いた。

「キス」