「はい」

「もしかして、検査を勧めてくれた医務室にお勤めの方って、北山ゆかりですか」

「はい、そうです、ゆかりさんをご存知なんですか」

「僕の姉です」

「えっ、北山先生ってゆかりさんの弟さん?」

「はい、世の中狭いですよね、あっ、保険証調べてみますね」

「あのう、私がここにいること内緒でお願いします」

「大丈夫ですよ、社会保険事務所に問い合わせるだけですから」

しばらくして北山先生が戻ってきた。

「立木さん、会社を辞めたことになっていませんよ、だからこの保険証使えますよ」

なんで?もしかして錑?
胸が熱くなって涙が溢れてきた。

錑、簡単に忘れられる人ではない。
今すぐ、会いたい、会って抱きしめてほしい、想いはどんどん膨らんでいく。

「大丈夫ですか?」

北山先生は私の態度から唯ごとでないと感じた。
ずっと我慢してた想いが溢れて止まらなかった、
北山先生はずっと肩を震わせて泣いていた私の手を握ってくれていた。

どれ位の時間が経っただろうか、泣き疲れていつの間にか眠ってしまった私は、錑の名前をうわ言のように呼んでいた。
目を覚まし、ずっと手を握ってくれていた北山先生を見つめた。