「おい、説明しろ」

「仕事上で契約は交わしたが、宇佐美不動産のお嬢さんと結婚なんて話はない、それに立木が俺を誘惑だなんて、逆だ、俺がみゆに惚れて口説いたんだ」

「そうか、しかし、立木くんの退職届は立木くんが自ら提出したものと聞いているぞ、麗子ちゃんの渡した金も受け取ったと言っておったが……」

「みゆは俺に迷惑かけないために、自ら身を引いたんだ、金は絶対に受け取ってない、みゆは金を受け取るような女じゃないからな」

「お前、立木くんと結婚したいのか?」

「ああ、みゆ以外考えられない」

「そうか、それなら、早く立木くんを見つけて結婚しろ」

「親父」

「宇佐美不動産との契約は、どうするかお前に任せる、わしも焼きが回ったな、若い子にすっかり騙された」

錑は病室を後にした。

錑は会社に戻り、高城さんにこれからの事を指示した。

「高城、宇佐美不動産との契約は解除する、書類の作成を頼む」

「社長、違約金が発生致しますが、よろしいのでしょうか?」

「構わん」

「かしこまりました」

「それから立木の退職届の受理を取りやめてくれ」