「お気をつけて行ってらっしゃいませ」

「あのう、旅行中鍵をなくすといけませんので預かって頂けますか?」

「かしこまりました」

横尾さんがマンションの鍵を預かってくれた。
私は錑のマンションを出た、もう二度と錑と会わないと心に決めて……

朝、会社では私の退職届が受理された書面が貼り出された。

「みゆ先輩、会社を辞めた?どう言うこと?」

友紀ちゃんが慌てて総務部に入ってきた。
総務部では大混乱で、二階堂くんは部長に食ってかかっていた。

「部長、みゆ先輩辞めたってどう言うことですか」

「一身上の都合だそうだ」

「部長は聞いてなかったんですか?」

「聞いていない、急に決まったらしい」

二階堂くんは秘書室へ駆け込んだ。

「社長いますか?総務部の二階堂です」

「社長は今出張中だ」

「すぐ連絡取ってください、みゆ先輩が会社辞めるってあり得ません、社長はご存知なんでしょうか?」

「まだだ」

「社長には連絡を入れておく、仕事に戻りたまえ」