「龍司」

龍司と私が見つめ合っている間に社長が立ち塞がった。

「盛り上がってるところ悪いが、みゆを口説いてるのは俺が先だから、割り込まないでくれ」

「君は?」

「人に名前聞く時は自分から名乗るのが常識だろう」

「橘不動産社長、橘 龍司だ」

「俺は桂木ホテルリゾートの桂木錑だ」

「役職は?」

「社長だ、まっ、就任したばかりだがな、悪いがあんたに順番は回って来ない」

「どう言うことだ」

「みゆは俺が落とす」

「みゆ、行くぞ」

社長は私の手を引き寄せ車に乗せた。

「みゆ、改めて迎えに来るよ」

私は視線を龍司に向けたまま、社長に引き寄せられた。

「みゆ!」

社長はいつもより力強い声で私の名前を呼んだ。
ビクッと反応して社長に視線を移した。