炎に飲み込まれるところまではっきりと記憶が残っている。

僕はあの時、たしかに死んだはずだった。

でも、死んだらあの世に行くというのは間違っているらしい。

だって、まだこの世界にいるのだから。

これはもしや地縛霊のようにこの世を彷徨うのではと絶望したけれど、他の人からはしっかり僕の存在が認識されているとわかると、少し希望が持てた。

だからきっとこれは神様が僕にチャンスを与えてくれたんだと、良いように解釈することにした。

沙希が生きているかが知りたかった。でも、彼女に関する情報は何もなかった。

事故のあった神社に行くと、既に小屋は無くなっていて、代わりに小さな慰霊碑が立てられていた。

よく見てみると苔が付いて年季が入っているように見えたから、あの事故以来かなり時間が経っていることに気が付いた。

同時に、これは僕のために建てられたものだと思うと、ちょっと申し訳ないとも思った。

沙希の家には、既に他の人が住んでいた。

思い切って彼女のことを聞いてみたけれど、数年前に引っ越してしまったという情報以外手に入らなかった。

その後も近隣に住む人に粘り強く聞き込みをしてみたけれど、しつこく聞いて回ってしまったせいで「怪しい子供がうろついている」という噂が流れてしまった。

それでも諦めきれなくて、できる限り手がかりを探し回った。

集落に住んでいる人に本当のことを打ち明けたこともあったけれど、怪訝な顔をされてしまうばかり。

それどころか、村に身寄りの無い怪しい子供がふらついていると噂され、とうとう警察が見回る始末になってしまった。

やっとのことで、当時境内で会ったおばあさんを見つけることができた。

でも、尋ねてみると、僕の顔を見るなり「生き神様」と言って拝み始めるばかりで、特に目ぼしいことは教えてくれなかった。

おばあさんには、僕の正体がわかっているようにも思えた。

探し回ることに疲れた僕は、ほとぼりが冷めるまで隣の集落に身を潜めることにした。

ここが彼女が生まれ育ったところなら、きっと帰ってくるに違いない。

どれだけ時間が掛かっても良い。ゆっくり探そう。

どうせ、すでに死んでいるのだし。

さすがに一人で住むのは大変だと思ったから、最初はなんとなく泊めてくれそうな人の家に行っては、一人旅をしているという体で、誰かのお世話になることにした。

でも、最初は順調のようにも思えていたけど、一週間もいると、家の人は段々と不審に思い始めてきたから、やめた。

幸いこの村には大きな空き家があって、僕はそこに隠れて過ごすことにした。

それに、既に死んでいるはずなのに、きちんとお腹は空く。

でも、お腹が空くということは、何か食べなければ餓死してしまう。

かと言って、もし空き家に住んでいるのが見つかってしまえば、いよいよここにも居られなくなってしまう。

悩んだ僕は、申し訳ないと思いながらも、夜になると畑に行って野菜を盗んでなんとか生き延びていた。けれど、もちろんそんなんじゃ全然足りないから、僕の身体はどんどん衰弱していった。



いよいよ身体が言うことを聞かなくなる頃、茂さんが現れたんだ。