カーテンの無い窓から照り付ける日差しに起こされた私は、しばらく布団の中でスマホをいじってから、のそのそと起き上がる。

連日の疲れが出ていたのか、アラームが鳴ってもしばらく起き上がることができなかったから、手当たり次第にボタンを押してスマホを黙らせる。

五分おきにセットされたスヌーズ機能によってようやく起こされると、いつもより一時間くらい遅く目が覚めたことに気が付いた。

曖瑠さんは既に出発しているみたいで、スマホにメッセージが入っていた。

昨日の夕飯時にLINEを交換しておいて良かった。

離れ離れになってもメッセージアプリやSNSで繋がりを持てる。

何かあればすぐに連絡することができるから、寂しいとか、そんなネガティブな感情は湧いてこなかった。

まやくんの部屋の前を通ると、相変わらず気配がなかった。

先に一階に降りて行ったのだろうかと思ったけれど、囲炉裏部屋も台所にも、どこにも姿はなかった。どこかに出かけてしまったのだろう。

今回もすぐに戻ってくるかと思ったのだけれど、しばらく経っても一向に戻ってくる気配がない。さすがにちょっと変だ。

ふらっとどこかに出かけてしまうことは多かったけど、その都度必ず私に声をかけてくれていた。

あまりこういうことをしてはいけないとは思いながらも、私はまやくんの部屋を除いてみることにした。

扉を開けると扉が軋む。

部屋の中は、驚くほど綺麗に整頓されていた。

いや、本当にここに人が住んでいたのかと思うほど、何もなくなっていた。

立ち尽くして辺りを見回してみると、部屋の隅には、丁寧に四つ折りにされた封筒が落ちていた。

丁寧に封がされていたし、誰に向けられて書かれたものなのかわからなかったから、開けるのを躊躇った。

けれど、今の状況からすると、この残された封筒だけが唯一の手がかりだったから、若干の罪悪感を感じながらも、思い切って封を開けることにした。

便箋に挟まっていたのだろうか、見たことのない花がひらりと落ちる。

そうっと拾い上げ、手のひらに置いてみると、白い鳥が羽を広げたような形をしていた。

整えられた文字がびっしりと並んでいるその手紙には、何度も書き直された跡がある。

私は立ち尽くしたまま、その血が通った文字を目で追う。

読んでいくうちに、薄々勘づいていたものを、いよいよ認めなければいけなくなった。

途端に、私の視界はみるみるうちにぼやけていって、広げられた手紙が、ぽたりと雫を受け止めた。