蒸し暑い日だった。

僕らは神社の広場で遊んでいたら、みるみるうちに雲行きが怪しくなり、あっという間に夕立が降ってきた。

慌てて秘密基地に避難すると、空がゴロゴロを地響きを立て始めた。

一人だと怖かったけれど、沙希がいるおかげで何とか泣かなくて済んだ。

カメラのフラッシュのような閃光と共に、地面が割れるようなバリバリバリという地響きを誘発する音。雷は小屋の外にある大木に落ちた。

運悪く落雷した大木は小屋の方に倒れてきて、入り口もろとも押しつぶしてしまった。

小屋の奥にいた僕らは何とか潰されずに済んだけれど、小屋に引かれていた電線がショートしたのだろう、小屋はみるみる煙に包まれていった。

閉じ込められた僕たちは、助けを呼ぶために必死に叫ぶ。

煙がどんどん充満してくる頃に、ようやくサイレンの音が聞こえてきた。

外で誰かが「中に子供がいる‼︎急げ‼︎」と叫んでいる。多分あのおばあさんの声だ。

でも、容赦無く僕らを襲おうとする炎の勢いは、一向に衰える気配がない。炎はもうそこまで迫っていた。

もう駄目だと思った。

でも、沙希は「まやくん、しっかり」なんて、自分のことなんてそっちのけで僕をことを助けようとする。

誰かが外から扉を開こうとしているけど、ぐちゃぐちゃになった壁面が邪魔をして、なかなか開かなかった。

やっとのことで開いたと思ったら、一気に火の手が大きくなって、僕は炎に飲み込まれてしまった。

それでも、沙希は僕を助けようと炎の中を躊躇せず右手を差し伸べる。

このままだと、沙希まで巻き込んでしまうと思ったから、イチかバチか、僕は沙希の身体を入り口に向かって全力で押し出した。


そして、僕は、力尽きた。

身体の中も外も、全部熱い。
何も見えない。
何も聞こえない。痛い、怖い。

ああ、僕はもう死ぬんだ。



……。



……。



……でも、沙希だけは、どうか沙希だけは、生き延びてほしい。

沙希に僕の分まで生きてなんて、そんな押し付けがましいことは言わない。

ただ、無事でさえいてくれれば、それだけで、十分だ。