「沙希さん、大丈夫?」
「……まやくん」
「たくさん汗かいたと思うから、水分をとっておいた方がいいよ」
「ありがとう」
しばらく横になっていたら、すぐに吐き気は治った。起き上がると、まやくんがリヤカーに入っていたスポーツドリンクを渡してくれた。
太陽の光に温められて既に生ぬるくなっていたけれど、ごくりと一杯喉を潤すと、また少し身体が楽になった。
「急に走り出したから、びっくりしたよ」
「……ごめん」
「本当にもう大丈夫?」
大丈夫と言おうとしたれど、何気なく慰霊碑の方を向いたら、また気持ち悪くなってきたからすかさず口を抑えた。
ここは呪われた場所か何かなのだろうか。
「まやくん、私、小さい頃、ここに来たことがあるかもしれない」
「沙希さん……思い出したんだね」
「うん。たぶん。階段で休憩していたら、昔ここで男の子と遊んでいたのを思い出したの。それで、階段を登った先のあそこに小屋があって。うっ……ま、毎日遊んでいたんだと思う」
迂闊に慰霊碑の方を見ると、しっかりと吐き気が襲ってくる。本当に、一体何なんだ。
見かねたまやくんが背中をさすってくれてドキッとしたけれど、慰霊碑の方さえ見なければ悪化することはなかったから、すぐにありがとう大丈夫と、付け加えておいた。
慰霊碑を見る度に気分が悪くなってくるから、私達はここを離れることにした。
名残惜しい気もしたけれど、記憶の一部が戻って来ただけで、大きな進歩だった。
思い出した記憶のことをお母さんに話したら、詳しいことを教えてくれるかもしれないし、茂さんだって何か知っていることを話してくれるかもしれない。
さと子さんは私の顔を見ると、まるで孫にでも会うかのように喜んでくれた。
クロを抱いたまま部屋に上がると、すぐにお茶とお菓子が出てきたから、しばらくさと子さんのお話に付き合うことにした。
なかなか話が切れなかったけれど、まやくんがキリの良いところで、すかさず「そろそろおいとましますね」と言って、上手く話を切ってくれた。
本来の目的である、お米をいただくことをすっかり忘れてしまうほど、野菜も沢山いただいた。
帰り際、まやくんに向かって「生き神様、もう会えないんですね」なんて、相変わらず失礼なことを言っていた。
その言葉を、私は特に気にも留めなかった。
「……まやくん」
「たくさん汗かいたと思うから、水分をとっておいた方がいいよ」
「ありがとう」
しばらく横になっていたら、すぐに吐き気は治った。起き上がると、まやくんがリヤカーに入っていたスポーツドリンクを渡してくれた。
太陽の光に温められて既に生ぬるくなっていたけれど、ごくりと一杯喉を潤すと、また少し身体が楽になった。
「急に走り出したから、びっくりしたよ」
「……ごめん」
「本当にもう大丈夫?」
大丈夫と言おうとしたれど、何気なく慰霊碑の方を向いたら、また気持ち悪くなってきたからすかさず口を抑えた。
ここは呪われた場所か何かなのだろうか。
「まやくん、私、小さい頃、ここに来たことがあるかもしれない」
「沙希さん……思い出したんだね」
「うん。たぶん。階段で休憩していたら、昔ここで男の子と遊んでいたのを思い出したの。それで、階段を登った先のあそこに小屋があって。うっ……ま、毎日遊んでいたんだと思う」
迂闊に慰霊碑の方を見ると、しっかりと吐き気が襲ってくる。本当に、一体何なんだ。
見かねたまやくんが背中をさすってくれてドキッとしたけれど、慰霊碑の方さえ見なければ悪化することはなかったから、すぐにありがとう大丈夫と、付け加えておいた。
慰霊碑を見る度に気分が悪くなってくるから、私達はここを離れることにした。
名残惜しい気もしたけれど、記憶の一部が戻って来ただけで、大きな進歩だった。
思い出した記憶のことをお母さんに話したら、詳しいことを教えてくれるかもしれないし、茂さんだって何か知っていることを話してくれるかもしれない。
さと子さんは私の顔を見ると、まるで孫にでも会うかのように喜んでくれた。
クロを抱いたまま部屋に上がると、すぐにお茶とお菓子が出てきたから、しばらくさと子さんのお話に付き合うことにした。
なかなか話が切れなかったけれど、まやくんがキリの良いところで、すかさず「そろそろおいとましますね」と言って、上手く話を切ってくれた。
本来の目的である、お米をいただくことをすっかり忘れてしまうほど、野菜も沢山いただいた。
帰り際、まやくんに向かって「生き神様、もう会えないんですね」なんて、相変わらず失礼なことを言っていた。
その言葉を、私は特に気にも留めなかった。