まやくんの「昨日行った船着場に行く途中の道を左に曲がって真っ直ぐ歩いていけば右に見えてくるよ」というざっくばらんな説明は、私の冒険心をくすぐった。
けれど、相変わらず容赦なく照りつける太陽は、私の体力を一方的にどんどん削ってくる。散歩は、夜の方が良いかもしれない。
行く前に渡された二本のペットボトルは、すでに大粒の汗をかいている。そのうちの一本をすぐに一本を開け、ゴクリと一口大きく飲み込んだ。
ひんやりとしたスポーツドリンクは、食道を伝って胃の中に入るのがはっきりとわかる。水分を吸収した身体は、すぐに汗を作り始める。
ひょっとして曖瑠さんはすでに干からびてしまっているのではと勘繰り歩調を早めようとしたら、聞き覚えのある鳴き声が私を引き留めた。
ナー。
クロが家の隙間から出てくると、私のところに一目散に駆けつけてきた。
健康そうな艶のある毛並みは、相変わらず何度も撫でてしまいたくなる。この暑さの中、全身真っ黒で過ごしているのは、ちょっと可愛そうだけど。
「クロ、ごめんね。早く曖瑠さんにこのスポーツドリンクを届けなければいけないんだ。また後でね」
喉元を軽く指で撫でてから、小さく手を振ってお別れする。
後ろ髪を引かれる思いをしたからチラリと振り返ってみると、私の後ろをしっかりと付いて来ていた。
目が合ったクロはまた「ナー」と鳴く。
いやいや今遊んでいる暇はないんだよと、心を鬼にして急ぎ足になる。
けれど、クロはまるで鬼ごっこを楽しんでいるかのように、猛ダッシュでついて来る。もう!なんでー!
こうなったら観念して一緒に行くしかないと腹を括った私は、クロが走らなくても大丈夫なくらいの歩調に変えた。
しばらく民家が続く細い道を歩き続けていると、堤防沿いの道に繋がった。道が続く先を辿って見てみると、岩場が見える。多分この先だろう。
堤防の上を歩くクロは疲れた素振りを全く見せなかった。
けれど私と目が合う度に何かを訴えるように鳴いている。
もしかして喉が渇いているのだろうか。
でも、さすがにクロにスポーツドリンクを飲ませるわけにはいかない。
どこかに水があれば良いのだけれど、ここでは自販機を見つけるのすら至難の業だ。
せめてこれ以上疲れさせないようにと、私は更に歩くペースを落とした。
回り込んだ堤防沿いの道を歩いていくと、突然向かいに小さな岩の島が見えた。
今は丁度潮が引いている時間帯なのだろう。堤防から岩場に降りた先から、干上がった一本道が続いていて、歩いて渡れるようになっていた。
一本道にある足跡を目で辿った先に、ぽつりと座っている人が見える。曖瑠さんだ。
堤防から岩場までは階段で簡単に降りられた。けれど、もともと海底になっていた一本道を渡るとなると、少し勇気がいる。
足元は少しぬかるんでいたし、時間が経ったら帰れなくなるのではないかと思うと、なかなか足が進まない。
でも、すでに曖瑠さんが先陣を切ってくれているから、もう思い切って行くしかないと腹を括った。
さすがに裸足のクロは湿ったこの地面を歩くのは嫌みたいで、頼りなく鳴きながらその場をぐるぐると回っていた。
ここまで来て放っておくのは、なんだか酷なような気がしたから、私はクロを抱えて渡ることにした。
ペットボトルとクロを抱えて歩くのはかなり大変だけど、やるしかない。
心配しないで、途中で放っていったりしないから。
けれど、相変わらず容赦なく照りつける太陽は、私の体力を一方的にどんどん削ってくる。散歩は、夜の方が良いかもしれない。
行く前に渡された二本のペットボトルは、すでに大粒の汗をかいている。そのうちの一本をすぐに一本を開け、ゴクリと一口大きく飲み込んだ。
ひんやりとしたスポーツドリンクは、食道を伝って胃の中に入るのがはっきりとわかる。水分を吸収した身体は、すぐに汗を作り始める。
ひょっとして曖瑠さんはすでに干からびてしまっているのではと勘繰り歩調を早めようとしたら、聞き覚えのある鳴き声が私を引き留めた。
ナー。
クロが家の隙間から出てくると、私のところに一目散に駆けつけてきた。
健康そうな艶のある毛並みは、相変わらず何度も撫でてしまいたくなる。この暑さの中、全身真っ黒で過ごしているのは、ちょっと可愛そうだけど。
「クロ、ごめんね。早く曖瑠さんにこのスポーツドリンクを届けなければいけないんだ。また後でね」
喉元を軽く指で撫でてから、小さく手を振ってお別れする。
後ろ髪を引かれる思いをしたからチラリと振り返ってみると、私の後ろをしっかりと付いて来ていた。
目が合ったクロはまた「ナー」と鳴く。
いやいや今遊んでいる暇はないんだよと、心を鬼にして急ぎ足になる。
けれど、クロはまるで鬼ごっこを楽しんでいるかのように、猛ダッシュでついて来る。もう!なんでー!
こうなったら観念して一緒に行くしかないと腹を括った私は、クロが走らなくても大丈夫なくらいの歩調に変えた。
しばらく民家が続く細い道を歩き続けていると、堤防沿いの道に繋がった。道が続く先を辿って見てみると、岩場が見える。多分この先だろう。
堤防の上を歩くクロは疲れた素振りを全く見せなかった。
けれど私と目が合う度に何かを訴えるように鳴いている。
もしかして喉が渇いているのだろうか。
でも、さすがにクロにスポーツドリンクを飲ませるわけにはいかない。
どこかに水があれば良いのだけれど、ここでは自販機を見つけるのすら至難の業だ。
せめてこれ以上疲れさせないようにと、私は更に歩くペースを落とした。
回り込んだ堤防沿いの道を歩いていくと、突然向かいに小さな岩の島が見えた。
今は丁度潮が引いている時間帯なのだろう。堤防から岩場に降りた先から、干上がった一本道が続いていて、歩いて渡れるようになっていた。
一本道にある足跡を目で辿った先に、ぽつりと座っている人が見える。曖瑠さんだ。
堤防から岩場までは階段で簡単に降りられた。けれど、もともと海底になっていた一本道を渡るとなると、少し勇気がいる。
足元は少しぬかるんでいたし、時間が経ったら帰れなくなるのではないかと思うと、なかなか足が進まない。
でも、すでに曖瑠さんが先陣を切ってくれているから、もう思い切って行くしかないと腹を括った。
さすがに裸足のクロは湿ったこの地面を歩くのは嫌みたいで、頼りなく鳴きながらその場をぐるぐると回っていた。
ここまで来て放っておくのは、なんだか酷なような気がしたから、私はクロを抱えて渡ることにした。
ペットボトルとクロを抱えて歩くのはかなり大変だけど、やるしかない。
心配しないで、途中で放っていったりしないから。