お昼ご飯を食べ終わると、お客さんに案内する部屋を掃除したり、家の壊れているところを修理したりと、忙しく働き回った。

と言っても部屋の修理はほとんどまやくんがしてくれて、私は隣で見ているだけだけど。

襖の修理なんてやったことがないから、邪魔をしないように精一杯隣にいることくらいしかできない。



「まやくんって、何でもできるんだね」

「そんなことないよ」

気が付くと、よっこらしょと襖を取り外す姿を見惚れている自分がいた。

「こうやって襖を取り外せることすら知らなかったし、障子の張り替えも、最初の頃は大方破いてしまって何度もやり直したよ」

「茂さんに教えてもらったの?」

「それもあるけど、数をこなしたら徐々にできるようになっていったんだ」

やれば出来るとか諦めずに挑戦し続けるとか、そんなあからさまな決まり文句は何度も聞いたことがあったけれど、それは本当にやっている人が言うからこそ、大きな意味を持つ。だからまやくんの言葉には重みがあって、格好良いと思った。



「やってみる?」



そう言って、まやくんは襖のレールに蝋燭を擦り付けるという、私でもできそうな作業を任してくれた。

急に作業を振られてまごついてしまうと、これは襖の動きを良くするために、蝋燭のろうを塗り付けるのだと教えてくれた。



「あ、あれ?」



隣で見ている時は簡単だと思っていたけれど、いざやってみると難しく、蝋燭はいとも簡単に折れてしまった。ごめんなさい。



「どんまい。よかったじゃん」

「え、良かったの?」

「うん。力加減がわかったでしょ。良い経験」



たしかに蝋燭が折れないようにする丁度良い力加減は、実際にやってみないとわからない。

失敗を無理矢理プラスに変換している気もしなくはなかったけれど、そんな考えはすぐにどこかに追いやることにした。



「もう一回やって良い?」

「好きなだけどうぞ」



その後も何度か折ってしまったのだけれど、めげずに続けていると、次第に折らずに塗れるようになってきた。

正直、作業自体はそんなに面白くはなかったけど、十数分前の私と比べると、明らかに何かが変わっている実感が湧いてきていた。

これが数をこなすということなんだ。

なんて前向きに考えられるようになったのは、きっとまやくんのおかげだろう。