「高校生活はどう?楽しい?」

「うーん……それなりに」

「そっか。部活は入っているの?」

「いえ、特に」

「写真部とかはなかったのかな、沙希ちゃんにぴったりだと思ったけど」

「美術部や文芸部はあるのですが、写真部はありません」

「ありゃ、そうなんだ。ちょっと残念だね」

「でも、写真部があっても入っていたかどうか」



部活となると多くの人が集まるし、人との距離が縮まる。そのような環境に私が入っていっても、上手くやっていけるかわからない。中学の頃のようになるのだけは絶対に嫌だ。



「ちなみに友達はどんな部活に入っているの?」



……友達。

……絵里ちゃんは、友達と呼んでいいのかな。



「えっと、ボランティア部に入っています」

「へえ!どんなことをするの?」

「駅前で募金活動をしたり、近くの福祉施設の手伝いに行ったりしているみたいです」

「なかなか本格的だね。沙希ちゃんは友達と一緒にやろうとは思わないの?」

「私なんかが人助けなんてできるわけないです。だから、絵里ちゃん……友達からたまに誘われますけど、いつも断っています。それに、友達は明るくて誰からも好かれていますから、ボランティア部が向いているんだと思います」

「沙希ちゃんもできると思うけどなあ」

「いえ……私なんて」



自分のことを話せば話すほど、自信がなくなってきて、何を話せば良いのかわからなくなってきた。

私との会話が途切れた茂さんは一人取り残されたようになってしまった。本当にごめんなさい。

会話を強制終了された茂さんは、一人でうーんと言いながら腕組みをしている。何かを考えているようだ。

と思っていたら、



「そうだ、沙希ちゃん、明日から夏休みだったよね!もし良かったら、一回僕の住んでいるところに遊びに来なよ」



 なんて言い始めた。なんで?どうしてそうなったの?



「沙希ちゃんって、風景の写真とか花とか自然のものを撮るのが好きだったよね。実は今、地元に拠点を移して仕事をしているんだけど、自然が多くて結構良いところなんだ。すぐ近くに山も海もあるし、何せ星がよく見える。きっと沙希ちゃんも気に入る場所だと思うよ」

「へえ……田舎……なんですか?」



何も考えずに田舎なんて言ってしまった自分にハッとしてしまった。失礼じゃなかったかな。



「それはもう、びっくりするほどのど田舎だよ。しかも僕の地元ということは、君のお母さんが生まれ育ったところでもあるんだよ。気にならない?」



私が言ったことは特に気にしていないみたいだったから安堵した。

田舎といえば、おじいちゃんやおばあちゃんと猫くらいしかいない長閑なところのイメージがある。この言い方はちょっと失礼かもしれないけれど。

高校生にもなったから、そろそろアルバイトもした方が良いのかなと思っていたけれど、失敗したらどうしようとか、迷惑をかけたらどうしようとか考えていたら、結局連絡をする勇気が萎んでしまってタイミングを失ってしまった。

だから特に夏休みの予定は無かった。行くとしても数日くらいだろうし、海や山の長閑な風景をカメラに収めるのも良いかもしれない。



「お母さんが育ったところだったら行ってみたい気がします」

「よし!決まり。それに、あそこは沙希ちゃんが小さい時……」

「小さい時?」

「いや、とにかく、そうと決まれば早速帰ったら姉貴、いや、お母さんに言わなくちゃね!」



何かを言いかけて途中でやめてしまったのが少し気になった。



「あ、それと、今家に沙希ちゃんと同い年くらいの男の子が居候しているけど、大丈夫?」

「え……男の子ですか?」

「そう。訳あってうちに住んでいるんだけど、家の壊れているところを修理してくれたり、僕が留守にしている時に家のことを面倒見てくれたり、いろいろ助けてくれるんだ。すごく大人しくて真面目な子だから、心配する必要はないよ」

「は、はい……」



訳って一体。というか、学校には行ってないのではないだろうか。茂さんはそう言うけれど、もし怖い人だったらどうしよう。

でも、今更断るのは悪いし。うん、ダメだったらすぐに帰ってこよう。