※
お母さんは、私が中学三年生の時に離婚している。
お母さんはバリバリ働くキャリアウーマンといった感じで、私が生まれる前から今のお仕事をずっと続けている。
私が小学生の時は、お母さんは夕方前には帰ってきていたから、よ夕飯作りを手伝っていた。
といっても手伝うのは面目上で、学校であった事をお母さんに話す時間だったような気がする。時々お母さんもお仕事のことを話してくれたけど、私は自分が話すのに夢中になりすぎて、お母さんの話はあんまり聞いていなかったと思う。
反対に、お父さんはいつも夜遅くに帰ってきていたから、あまり話す機会がなかった。
けれど、休日になると近くの公園にカメラを持って散歩に出かけて、一緒に写真を撮ったりした。家に帰るとお父さんが写真をプリントアウトしてくれて、それを部屋にたくさん貼っていた。
中学生に上がったくらいから、お母さんとお父さんの仲が悪くなってきた。
二人は家にいても滅多に目を合わさなくなり、お父さんは家に帰ってくる時間がもっと遅くなって、その分お母さんはどんどん怒りっぽくなっていった。
私がいるところでは決して喧嘩をすることはなかったけれど、私は知っている。私が部屋に入ると、お母さんとお父さんが言い合いをしている声が聞こえてきていた。
そしてお母さんは何度も大きな溜息を吐くようになった。その時のお母さんの表情を、私は忘れられない。でも、私が姿を現すと、何事もなかったかのように作り笑いをする。
私が来るとお母さんが無理をしてしまうから、できるだけお母さんと一緒にいないようにした。もちろん学校でいじめられていることも言えるわけがなかった。心配事を増やしたくないから。
そして中学三年生の時に、お母さんとお父さんは別々に生きることを選んだ。
お父さんは、私に「沙希はお母さんと一緒に暮らしなさい。すまない」って言っていた。けれど私には一体何を謝っているのかがわからなかった。
二人が離れ離れになったのは二人の問題で、私がとやかく関わことはない。二人が納得した上で決めたのなら、それで良かった。
でも、やっぱりお父さんと離れ離れになるのは寂しかった。私の撮った写真を沢山褒めてくれたり、一緒にいろんなところに出かけたことを思い出したら、涙が出てきた。
でも、私が泣いているところを見せるとお父さんが出て行きにくくなるし、お母さんを悪者にしてしまうような気がしたから、自分の部屋だけでこっそりと泣いた。
お父さんは出て行く前日に、「使い古したものになるけど、もらってくれないか」って言って、私にカメラとノートパソコンを渡してくれた。もうお父さんに二度と会えないような気がしたから、また少し泣きそうになった。
唯一お父さんとのつながりを持てるような気がしたから、もらっておくことにした。
本当は写真を撮るのが好きなのではなく、お父さんとの思い出を忘れたくないから、写真を撮っているのではないかと思う時がある。
……だから本気で写真を撮っている人に失礼だと思う。私の写真にかける想いなんて、そんなものだから。
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お母さんは、私が中学三年生の時に離婚している。
お母さんはバリバリ働くキャリアウーマンといった感じで、私が生まれる前から今のお仕事をずっと続けている。
私が小学生の時は、お母さんは夕方前には帰ってきていたから、よ夕飯作りを手伝っていた。
といっても手伝うのは面目上で、学校であった事をお母さんに話す時間だったような気がする。時々お母さんもお仕事のことを話してくれたけど、私は自分が話すのに夢中になりすぎて、お母さんの話はあんまり聞いていなかったと思う。
反対に、お父さんはいつも夜遅くに帰ってきていたから、あまり話す機会がなかった。
けれど、休日になると近くの公園にカメラを持って散歩に出かけて、一緒に写真を撮ったりした。家に帰るとお父さんが写真をプリントアウトしてくれて、それを部屋にたくさん貼っていた。
中学生に上がったくらいから、お母さんとお父さんの仲が悪くなってきた。
二人は家にいても滅多に目を合わさなくなり、お父さんは家に帰ってくる時間がもっと遅くなって、その分お母さんはどんどん怒りっぽくなっていった。
私がいるところでは決して喧嘩をすることはなかったけれど、私は知っている。私が部屋に入ると、お母さんとお父さんが言い合いをしている声が聞こえてきていた。
そしてお母さんは何度も大きな溜息を吐くようになった。その時のお母さんの表情を、私は忘れられない。でも、私が姿を現すと、何事もなかったかのように作り笑いをする。
私が来るとお母さんが無理をしてしまうから、できるだけお母さんと一緒にいないようにした。もちろん学校でいじめられていることも言えるわけがなかった。心配事を増やしたくないから。
そして中学三年生の時に、お母さんとお父さんは別々に生きることを選んだ。
お父さんは、私に「沙希はお母さんと一緒に暮らしなさい。すまない」って言っていた。けれど私には一体何を謝っているのかがわからなかった。
二人が離れ離れになったのは二人の問題で、私がとやかく関わことはない。二人が納得した上で決めたのなら、それで良かった。
でも、やっぱりお父さんと離れ離れになるのは寂しかった。私の撮った写真を沢山褒めてくれたり、一緒にいろんなところに出かけたことを思い出したら、涙が出てきた。
でも、私が泣いているところを見せるとお父さんが出て行きにくくなるし、お母さんを悪者にしてしまうような気がしたから、自分の部屋だけでこっそりと泣いた。
お父さんは出て行く前日に、「使い古したものになるけど、もらってくれないか」って言って、私にカメラとノートパソコンを渡してくれた。もうお父さんに二度と会えないような気がしたから、また少し泣きそうになった。
唯一お父さんとのつながりを持てるような気がしたから、もらっておくことにした。
本当は写真を撮るのが好きなのではなく、お父さんとの思い出を忘れたくないから、写真を撮っているのではないかと思う時がある。
……だから本気で写真を撮っている人に失礼だと思う。私の写真にかける想いなんて、そんなものだから。
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