「まさか、自分から書いておいて約束を忘れるだなんて、何やってるんだろうね、私」
独り言のようにしゃべっている彼女をただ見ていると、
「ちょっと、何かリアクションくらいしてよ！！私アホみたいじゃん！！」
と唐突に怒り出した。いや、ホントに怒っているわけではないらしい。
「君は、独り言言ってるんじゃなかったの？」
「そうそう、これは独り言で……ってんなわけあるか！！私は君に話しかけてるんだよ、京星奈くん」
「……」
なんと返したらいいのか分からず黙り込むと、彼女は僕の顔を至近距離で見上げてきた。くっきりとした二重線のはいった大きな目に見つめられ、身体が何だかむずがゆい。
「なんか反応してよー！薄情なやつだなぁー」
「反応って……」
「もういいや、それで本題に入るんだけど……あ、君を呼び出したのは、私ね」
それはもう十分と言っていいほど分かっている。