「あ、いや、僕…」
「だーかーら、早くここから解放してってば!警察に通報しますよ!」
声をかけて、ここまでしたのに、警察に通報される筋合いなんて、どこにもない。
寝起きでボケているのか、わーわーと騒ぐ彼女を前に黙っていると、
「あれ?」
と彼女は、突然静かになった。
「もしかして……京くん?」
いやいや、今頃?とか思いつつ、
「…京だけど」
と言う。すると、彼女は先ほどまでの寝ぼけはどこにいったのやら。
「ご、ごめんねっ!あんなところで倒れて」
と言って、荷物をしょって、立ち上がった。その時、またふらついた彼女の身体を僕は支えた。
「ホント、ごめんねっ!あ、ありがとう、ちゃんとお礼するから!じゃあね」
彼女はそう言うと足早に家から去っていった。少し焦っていたような気もする。
さっきまでのうるささが幻だったかのように、彼女がいなくなると、部屋が静寂に包まれた。
ホントに、ただの気まぐれだった。だけど、この出来事が僕の日常を変えることになる。