他に気にすることもないから、僕は何となく彼女の事をぼんやりと眺めながら帰っていた。
すると、突然彼女がバランスを崩し、地面に倒れこんだ。
「!?」
僕は思わず声をかけていた。いつもはこんな後々面倒くさそうなこと、しないのに。
「だ、大丈夫、ですか……」
僕は、彼女の横にしゃがみこんで訊いてみる。
彼女は、苦しそうに顔を歪めて、胸のあたりを抑えていた。
これはやばいのではないか、そう思い僕はスマホを取り出した。
119、と打ち込んだところで、腕を掴まれた。
下を向くと、彼女が苦しそうに顔を歪めたまま首を横に振った。
よく耳を傾けると何か言っている。
「だ、大丈夫……だから。少し待てば…」
「…え?」
僕は、なんだか心配だったので、ある程度落ち着くまで、と思って隣にいたが、一向に落ち着く気配がない。
しきりにハァ、ハァ、と言っていて、大丈夫かと心配になったので、もう一度僕は電話をかけようとする。
「だ、大丈夫」
そう言って、再び手を掴まれた。