「どうぞ、座っていいよ」
顔なじみの先生がにこやかに笑って僕に座ることを促した。
いつも通り、いくつか質問をされ、僕はそれに答えた。
「うん、事故に遭ったすぐ後より、大分あったことを覚えていられるようになったね。よかったよかった」
「……ただ、僕はまだ思い出せないんです。家族や大切だった人とのことを。どうしても」
「大丈夫だよ。きっかけさえあれば、それが君の頭の中の霧を晴らしてくれる。そしてら、君はきっと思い出せるようになるよ」
「……そうですか」


検診が終わり、家に帰ってきたら、僕は自室に籠り課題を済ませた。その後なんだか身体が気だるくて動く気にもなれず僕は思いっきりベッドに寝っ転がった。
しばらくすると、頭痛もしてきた。
「痛……」
重い体を起こしてリビングに置いてある体温計で熱を測った。
三十七度八分。
「はぁ……」