「あ、そういえば神野さん？話しかけてくれたよ」
「あ！麻衣と話したんだ！いい子でしょ？」
「…まぁ。で、なんの用？」
「あ、そうそう。寂しいと思うけど、今日は一緒に帰ってあげられないんだ。また明日、一緒に帰ってあげるから泣かないでね？」
「…はぁ？」
泣かないでね、って。僕をなんだと思っているんだ。第一何度も思ってはいるが、帰ってほしいなんて一言も頼んだ覚えはない。
「うん。まぁ、頼んでないし、それに今日は僕も用事が」
記憶に障害が一応あるため、僕は定期的に病院に検診に行っている。今日はそのひだった。
「そっか、なんか怪しいけど」
「…病院」
「ふーん、じゃ、また明日ね」


その後、特に変わったことはなく、担任がホームルームでいつもと似たようなことを喋って終わった。

「京さーん、京星奈さーん」
病院の待合室で特にすることもないので、本を読んでいると、看護師さんに呼ばれ、僕はいつもと同じ診察室に入る。