ただ、モノクロだった。僕の世界は―。

ジリリリリ。
けたたましいアラームの音で目を覚ます。
「ねむ……」
気を抜くとまた寝落ちしそうな瞼を手の甲でごしごしと拭ってから起き上がる。
制服を着て、キッチンへと向かった。
僕、京星奈は家族がいない。別に捨てられたとか、そんなんじゃない。
僕は小学生の時、事故に遭ったらしい。その時、頭を強打して、僕自身も生死をさまよったらしく、親も、兄も亡くなって、唯一生き残ったのが僕、らしい。
僕は、その事故で頭を強打していて、事故に遭った後目を覚ました時より前の記憶がない。つまり、記憶障害というわけだ。すべてが頭の中から抜け落ちたわけではなく、知能だけは残っていた。だから、勉強などに困ることはなかったが、思い出せない、家族のこと、大切だった人たちのことが、どうしても…。
僕は、トースト一枚だけ焼いて食べた後、家族の仏壇に手を合わせる。
誰かも思い出せないのに。