「……あぁ、ごめんごめん。ちょっとね」
星野はそう言ってしばらくすると、立ち上がった。
「さて、じゃあ一緒に行きますか」
「えぇ……」
「ちょっと!!何よ、そのあからさまに嫌そうな顔は!」
たった今までの元気のなさはどこに行ったのやら、いつもの調子に戻った星野はもう一度頬を膨らませ、怒っているかのような顔を表現する。
「だって……」
「だってもクソもない!ほら、始まっちゃうよ」
星野は、そう言うと、普通の速さで歩き出した。
教室に入ると、クラス中の視線がこちらに集まった。
「おっはよー!」
「おはよー!…!?」
星野の挨拶に返事をしたクラスメイトは、星野の横に立つ僕に好奇心の目を向ける。
その視線がなんだかむず痒かった。今すぐ逃げ出したいくらいに。
すると、僕の気持ちを察したように、星野が小さな声で
「……大丈夫だよ。何も怖くなんかないから」
と言ってくれる。
「……うん」